編集部 2018.10.08 【インタビュー】音楽で生計は立てられるのか? -渡辺淳之介編-

BiSHをはじめ、BiS、GANG PARADE、EMPiREといったグループのマネジメントを行う株式会社WACK代表の渡辺淳之介。サウンドプロデューサーの松隈ケンタとともに自身も作詞なども行い、アパレルブランド「NEGLECT ADULT PATiENTS」も立ち上げるなど、クリエイティヴに関わりながら会社経営もするマルチな才能の持ち主だ。そんな渡辺が考える音楽で食べていくための秘訣について話を訊いた。

■「ワンマンライヴで1,000-2,000人くらい集客できるアーティストがいれば利益が出る」

mane_img_20181008_2

――渡辺さんが、株式会社WACKを立ち上げたきっかけは何だったんでしょう?

これは、それぞれの会社における哲学の問題だと思うんですけど、僕が働いていた会社はインディーズながら何十人もスタッフがいたので、なかなか売上をアーティストに還元できなかった。でも、旧BiSを運営していく中で、スタッフが2人いれば回るなということがわかったんです。

2人の月給が25万だったとしたら、月50万円しかかからないわけじゃないですか? 10万くらいのアパートを事務所で借りても、販管費が60万円しかかからない。それくらいの少人数でやったら、アーティストにめちゃ還元できると思ったのが理由です。

あと、ワンマンライヴで1,000-2,000人くらい集客できるアーティストがいれば利益が出るってわかったから、僕も利益を独り占めしたいなと思ったところはありましたね(笑)。

――ワンマンに1,000人呼べるようになったら、どれくらい儲かるんですか?

ビジネスの仕方にもよるんですけど、アーティストへの還元方法とか人件費とかを考えずにやっても、年間数千万は儲かるんじゃないですかね。

――それはアイドルに限ってですよね?

いや、バンド形態で1,000人呼べるのに食えないって言っているのは甘えだと思いますけどね。単純に利益は出ると思いますから。それを音楽にぶつけるのか物販をメインで売るのかとか、何かしらできるはずですけどね。

――1,000人のお客さんを呼べれば、音楽で食えるっていうのは希望ですね。

マネージャーを1人つけて、真剣にビジネスを突き詰めれば全員食えると思いますよ。バンドの場合、スタジオ代とかいろんな経費がかかってくると思うんですけど、逆にいうとバンドは稼働しなくてもCDが売れると思うんです。

レコーディングにかけるお金を抑えれば原価も圧縮されていくし、売り上げも青天井なので。何年もアルバムを出さなかったら、そりゃあ売れないだろうとは思いますよ。

それで結局仕事をしなくちゃいけなくて、仕事が休みの土日しかライヴができなくて、土日はライヴハウスが一杯でとれないしみたいな、負のスパイラルに陥っているバンドもいるのはもったいないなと。

■「基本的にやりきるくらいまで自分を追い込まないと、その運は使えないんじゃないかと思います」

――なぜ、渡辺さんが仕掛けたBiSHは売れたと思いますか?

正直な話、大部分は運だと思います。多分、世の中には才能を持っているけどくすぶっている天才がいるわけですよ。すごく素敵なプランを持っていて、売れる才能を持っているやつでも、結局運によって左右されているんじゃないかなと思っていて。

もちろん、運を手繰り寄せる努力っていうのはあると思うんですけど、エジソンが言っている「天才は1%のひらめきと99%の努力」っていうところに終始すると思っていて。努力してるからといって、芸能の世界自体は報われるわけじゃない。そういう意味でいうと、完全に運ですよね。

――BiSHが1番運を使ったところはどこなんでしょう?

それは立ち上げのときかな。99%の努力っていうところで言うと、旧BiSを3年半死ぬ思いでやって横浜アリーナで解散して、そこから半年後にBiSH始動の宣言をした。みんなから「バカなの?」って言われたんですけど「もう1回BiSをやる」って言ったところで1番運を使ったのかなと思います。

その時点で、何が成功の鍵になるかは全然わからないから、基本的にやりきるくらいまで自分を追い込まないと、その運は使えないんじゃないかと思いますけど。

――カクバリズム代表の角張渉さんが本(『衣・食・住・音 音楽仕事を続けて生きるには』)を出したんですよ。そこには「常にいいものを作ったら売れるんだってことを信じてやってきた」と言うことが書かれていて。その考えに対して、渡辺さんの意見はありますか。

僕はそうは思わない、とまでは言わないんですけど、限りなく成功に近づけさせる努力をしつつ、友達がいて広めてくれる人がいて、っていう意味でいうと、角張さんも運がよかったんだと思うんですよ。

僕も旧BiSをやっていたので、BiSHを始めるとき業界内に知り合いがいっぱいいたので、デビュー時にメジャーレコード会社何社からも声がかかったし、いきなり地上波の全国放送にも出れた。っていうところでいうと、広めてくれる友人がいるからって理由もすごく大きいと思うんですね。

角張さんもバンドやレーベルなどいろんなことをやってきて友達がいっぱいいる中で、いい音楽をいい音楽だって伝えて納得してもらえる状況の中、成功した部分もあるのかなと思いますね。世の中には、本当にいい音楽を作っていても、埋もれちゃう人たちはいっぱいいるので。

――BiSHも、やっている音楽や活動を評価してもらえる状況が整っていたと。

そういう意味でいうと、BiSが終わったあとにBiSHを始めたことが、いいって思ってもらえる担保になったと思うんですよね。

■失敗を活かしながら丁寧にやっていくことが近道なのかもしれない

――クリエイティブとビジネスのバランスをどう考えているのかも訊きたいんですけど、渡辺さんは売れないアートはしていないじゃないですか?

そこは難しい問題なんですけど、クリエイター的目線からいくと、僕とサウンドプロデューサーの松隈ケンタは才能がないことを自覚していて。

天才の場合、何も考えずぱっと作ったもので1億人を感動させるんですよ。僕たちはその天才になれなかったことをよく自覚しているので、天才と言われている人たちの作った楽曲とか歌詞を聞いて咀嚼して、どういうふうに表現したらいいかをすごく勉強している。

もちろん僕たちのことを天才と言ってくれる人たちもいるんですけど、どうしようもなく偽物だなと僕は思いながら作っています(笑)。

――よく自分でモノマネだって言いますもんね。つまり、まったく聴いたことのない音楽とかを0から目指そうとは思っていないってこと?

まったく思わないですね。それは天才のやることなので。そこの自覚はすごくあるかもしれない。あと、単純に僕は二匹目のどじょうを掬いに行きたいタイプなので、基本的には流行に寄り添いたいというところはありますね。

――クリエイターとして、将来流行に乗れなくなってしまうみたいなことは宿命の1つにあると思うんですけど、例えば、5年後のことを考えたりしますか。

そこは本当に命題で。この間もテレビ局のディレクターさんとご飯を食べていたとき、「俺たち、若い子に相手してもらっているよね?」って話をして。やっぱり若い子たちが作るものに憧れちゃうんだけど、若い子達はおっさんが嫌いだから。

僕も今年34で、世でいうおっさんになってきちゃったなっていうのはすごく思うんです。僕もBiSを始めたのが20代だったので、若い子と関わりながらも、若手っていうイメージからどうやって脱却していくかが課題ですね。

――最後に。1%の運を手繰り寄せるには、どうしたらいいんでしょう?

気づかないうちに、ターニングポイントがあるはずなんですよ。そのときの選択が1個1個正解だったのか間違いだったのかは後からしか検証できないんですけど、BiSHはターニングポイントでの選択をそんなに間違えずにきたのかなという気がしていて。

僕が手がけている他のグループには、ダメだったって言われる時期があるんですけど、BiSHにはほとんどないんですよね。そういう意味でいうと、それまでの人生の中で何回も失敗してきたことを1つ1つ検証しながら、その失敗を活かしながら丁寧にやっていくことが近道なのかもしれないですね。

取材協力:渡辺淳之介

東京生まれ。BiS、BiSH、GANG PARADE、EMPiREを手がける株式会社WACK代表。

マネチエでは身近なお金の話題をお届けしています
この記事を気に入っていただけたらフォローをお願いします!

ページトップ