編集部 2018.06.22 余ったお金はロボットに!? サービス比較と選び方

将来のために資産を蓄えておきたいといっても、今のご時世、銀行に預金していても利子なんてほとんどつきません。どうやって資産を増やしたらいいのかと悩んでいる方も多いのではないでしょうか。今回は、誰でも簡単に儲かるとか、そういうキャッチーな話ではなく、けっこう淡々としたものなのですが、じっくりと投資で資産を積み上げていきましょうというお話をしたいと思います。

お金の分け方と活かし方

銀行口座を眺めてみて、「すぐに必要なお金」「何かあったら必要なお金」「それ以外」くらいに大別してみましょう。

すぐに必要なお金というのは、今月来月の生活費や支払予定のあるお金です。これは、使ってしまうと生活に支障がありますのでどかします。「何かあったら必要なお金」は、何かとは何だというのが問題ではありますが、たとえば自家用車を持っているとしましょう。うっかりこすってしまった場合や、あるいはぶつけてしまったというような時に、ふだんの生活費よりはまとまったお金が必要になります。

ほかにも、不慮の事故や意図しない病気などで働けなくなったらどうしようとか、不安の種はつきないものですが、そういうものへの対応費用が「何かあったら必要なお金」となります。そして残りが、要するに用途不明の貯金となって口座にたまっている「それ以外」のお金です。

今どきは銀行にどれだけ預けていても利子で儲かるみたいなことはないので、「何かあったら必要なお金」と「それ以外」は、ただひたすら銀行口座にあるだけの資産として寝かされ続けていくこととなります。寝かされ続けているこの資産たちを便宜上、待機資金と呼びましょう。待機資金、そう待機しているのです、このお金たちは。寝かされ続けるだけではなくて、何かに使ってくれと……。

使うといっても散財するわけではありません。せっかくためたお金ですから無駄遣いは禁物です。単に寝かせる場所を変えましょうということです。場所を変えるだけなので結局は寝かせ続けることになるんですが、銀行口座ではないところで寝かせるのは、イコール働かせていることにもなるのです。すなわち有効活用させようということです。いよいよ察しがついてきたかと思いますが、ここで登場するのが証券口座です。現金(預金)を株式や投資信託などの有価証券に変えて、その状態で寝かせるのです。

投資のキーワードは「分散」と「ロボット」

さて、株にせよ投資信託にせよ、どういう銘柄を買えばいいのか?というのが、投資の初心者に立ちはだかる最初の壁です。好きな会社の株を買って応援するとかであれば、それはもう本当に好きな銘柄の株を買えばいいのですが、今回の目的は待機資金の有効活用ですので、ある程度は儲けの効率のようなものを考慮する必要があります。

ただ、投資の初心者には、考慮といっても正直わからないわけですから、そこで利用したいのが分散投資とロボアド系のサービスです。

分散投資というのは投資の手法で、すべての資金を1つの商品に集約するのではなく、ばらけていろいろな商品を購入するものです。そして、株や投資信託などを組み合わせてひとまとめにしたものをポートフォリオと呼びます。ポートフォリオの内訳がイイ感じにばらけていれば、あっちの株が下がったけどこっちの株が上がったから合計では損失は無いよねというふうに、バランスをとって運用できるわけです。

ロボアドはロボアドバイザーの略で、ロボアド系の投資サービスというのは、人に代わってロボがイイ感じに運用してくれるというものです。このロボですが、テキトーな売買プログラムということではなく、各社各様の投資ノウハウに基づいた渾身のAIあるいはロジックによって動いているものです。要するに、少なくとも投資の初心者たちよりはよっぽど頭がいいということです。

投資というか、相場というものを目にしながら、感情や欲望に左右されずに売買するのは本当に難しいこと。

えてして、この上がり調子ならきっともっと上がるに違いないだとか、キリのいい数字までいったら売ろうとか思ってしまうものなのですが、そんなことはもちろんなくて、上がるどころか下がる一方で資産がどんどん目減りしていくのを目の当たりにするみたいなことも多々あるわけです。

ところがロボが運用すれば、そのようなことはなく、ただひたすらに、相場のこういう状況下ならばこうと、買うべきならば買うし売るべきならば売るというノウハウに基づいた決定に従うだけの動作を徹底してくれるというわけです。これは、利用しない手はありません。

ロボアドの種類と使い分け方

そんなロボアド系の投資サービスには、大きく2つありまして、投資一任契約のものと、そうでないものです。簡単にいうと、投資一任契約は完全にお任せ運用となるので、すなわちロボがせっせと勝手に運用してくれるということになり、そうでないほうはロボが適宜にアドバイスをしてくれるので、それを参考にしながら自分で運用するということです。

運用というのは具体的にはリバランス、もしくはポートフォリオ自体の変更です。相場の変動具合によっては、ポートフォリオがリスク回避のバランスをとっていたのがアンバランスな感じになってしまうことがありますから、内訳を売ったり買い直したりしてバランスを取り直す、これをリバランスといいます。リバランスだけではバランスを取り直せなかったり、そもそも相場観的に現在のポートフォリオが今一つかもしれない時は一旦全部売却して、ポートフォリオ自体を作り直すなんてことも考えられるわけです。これをロボがやるか、ロボに言われて自分でやるかということです。

ロボアド系サービスは各社がこぞって参入しているのでいろいろあるのですが、ここでは「THEO」と「楽ラップ」、そして「マネックス・アドバイザー」の3つを題材に検討してみることにします。

THEO】(運営会社:株式会社お金のデザイン)

(画像提供:筆者)

THEOは日本のロボアド系ではわりと先駆者的な立ち位置にいると思います。THEOで買えるのは海外ETFです。ETFは上場投資信託のことですが、では上場投資信託とは何かと深堀していくのは別の読み物に委ねるとして、ひとまずTHEOは、海外ETFでポートフォリオをつくるとロボがイイ感じに運用してくれるところだと解釈しましょう。

口座開設は10万円からで、月々1万円から積立投資できます。

楽ラップ】(運営会社:楽天証券株式会社)

(画像提供:筆者)

楽ラップは大手証券会社による投資一任契約のロボアドとしてはわりと先駆者的な立ち位置ですね。楽ラップで買えるのは投資信託です。投信という言葉を聞いたことが何となくあるかもしれませんが、それのことです。楽ラップは、投資信託でポートフォリオをつくるとロボがイイ感じに運用してくれるところだということになります。

THEO同様に口座開設は10万円からで、月々1万円から積立投資できます。

マネックス・アドバイザー】(運営会社:マネックス証券株式会社)

(画像提供:筆者)

マネックス・アドバイザーは投資一任契約でないロボアドで、国内ETFが購入できます。投資一任契約ではないので、必要なタイミングでリバランスを提案されるので、するかしないかを判断して運用することになります。特徴的なのは、マネックス証券チーフストラテジストの広木氏の相場見通しや、世界最大の資産運用会社・ブラックロック社の相場見通しを自分のポートフォリオに反映できるところです。これをやると、もはやロボのアドバイス関係ないだろうってことになってくるのがちょっとおもしろいですね。

口座開設は5万円からで、月々1万円から積立投資できます。ちなみに積立投資を設定しておくと、積み立てるタイミングごとにポートフォリオのバランスを取りながらETFを追加購入することになるため、実質的に自動リバランスすることになります。積立投資をしておくことで、半分くらい投資一任してるような感じになるのでお得感があります。

さて、いずれのサービスにしても、もっとも重要なのは「放っておく気持ち」です。ちまちまと日々ポートフォリオを眺めて、相場に連動した資産の含み増減を見て一喜一憂するのではなく、放っておくことが肝要です。そもそも、この手の投資の期待利回りは年5%前後ですから、そんなに一気に儲かるとかそういう話ではないのです。

また、ちまちまリバランスなどしていくと、ポートフォリオの内訳を売却することになるため都度税金が発生するなど、細かくいじればいじるほど資産が減っていくという本末転倒なことにもなりかねません。とはいえ、銀行預金の金利に比べたら圧倒的に大きい利回りが期待されるのもまた事実……。ですから、積立投資を設定しておいて、あとはせっせと日常業務にいそしむことをお勧めします。10年くらいして、ふと思い出したように口座を見てみたらなんか結構増えてるぞと、そういうくらいの気持ちが良いのだと思います。

また、最初に口座を開設する時は、最低金額から始めるのではなく、待機資金をまるっと入れるっていうくらいの勢いで入れておいたほうが良いと思います。10万円ではじめちゃうと年利回り5%で5000円ということで、けっこう何それ感がありますが、100万円なら5万円ということで、わりとわかりやすく資産が増えてる感が出てきますのでモチベーション的にも好影響があるのではないかと思われるのです。

そういうわけですから、どのサービスを選ぶかという時、もちろん基本的な話としてサービス利用料や信託報酬などの経費がどれくらいなのかというのはあるにしても、まずは放っておきやすいかというところがポイントになります。もっとも、いくらメールやプッシュで通知されてもひたすら無視することで、いくらでも放っておけるわけですから、どのサービスも等しく放置できるともいえます。したがいまして、どこで差がつくかというと、基本的には放置プレイなのだけどたまには見てみようと、そういう時に、すぐにポートフォリオの状況が見れるかというのが、サービス選択の大きなポイントになるでしょう。

ロボアド選びのポイント

THEO、楽ラップ、マネックス・アドバイザーの3つでいうと、ログイン直後すぐにポートフォリオの総額がわかりやすく見れるという点ではTHEOが良いと思います。楽ラップは楽天証券の1メニューなので、ログイン後どうしても1クリック増えてしまいます。まあ楽ラップしかやってなければ、楽天証券のログイン直後で総額わかるので問題ないといえば問題ないですが。

しかしTHEOと違って、楽天証券は多様なサービスや商品を内包している証券サイトであるがゆえに、重要なお知らせという名の避けては通れず読まなければいけない通知のたぐいに出くわす可能性が、THEOに比べるとかなり高いということはいえます。マネックス・アドバイザーも楽ラップと同様で、マネックス証券の1メニューなのでログインしてからマネックス・アドバイザーに移動するまでに数クリックが必要ですし、重要なお知らせのたぐいに出くわす率は楽ラップと同程度といった具合です。

そうなるとシンプルにロボアドオンリーのTHEOがいいのか?ということになるものの、たとえば楽天銀行に口座を持っているなら楽ラップのほうがいいともいえますし、楽天証券は楽天スーパーポイントも使えたりするので、何かと楽天に集約している人だったら楽ラップというのも悪くなさそうです。

この2つと比べるとマネックス・アドバイザーは劣勢な気がしてきますが、前述のとおり積立投資にしておくと半分お任せ状態にできるのにアドバイス型だから手数料が安いという点は優位点だともいえるでしょう。

この3サービス以外にも、ロボアドはいろいろな会社から提供されていますので、「日常的には放置しやすいか」「たまに見たときにストレスなく総額把握できるか」の2点を念頭に置きながらサービス選定してみることをおすすめします。

株式会社ツルカメ UXディレクター
森田雄

東芝EMI、マイクロソフト、ビジネス・アーキテクツなどを経て、現在はツルカメ代表取締役社長、ネコメシ代表取締役CEO、Evolve Art & Design Japan理事。IA/UXデザイン、アクセシビリティ、ユーザビリティのスペシャリスト。主な著書(共著)に「UX侍~スマホアプリでユーザーが使いやすいデザインとは~」など。

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