編集部 2018.06.15 子どもの教育にも使える“家庭内仮想通貨”のススメ

仮想通貨をご存知でしょうか。ビットコインに代表され、ネム(編集部注:多数存在する仮想通貨の1種)が大量に盗まれたことで大きなニュースにもなったあれです。暗号通貨とも言います。ただ、今回紹介します家庭内仮想通貨は、ビットコインなどの仮想通貨とは何の関係もありません。家庭内のみで流通する通貨のようなもののお話となります。

■家庭内仮想通貨とは

私の家族は夫婦と娘2人の4人家族ですが、4人とも、「マル」と呼ばれる家庭内仮想通貨を保有しています。仮想通貨なので、物理的なコインのたぐいはなく、紙に記号の「マル」を書くことで個数を管理します。

使うときは口頭で何マルを行使するか言って、問題なければ使用され、宣言しただけのマルが消されます。消しゴムで消すのではなくて、二重線で潰していったり、バツを上から書いて潰すなど、まあ消し方は適当です。

そして、マルの貯め方、あるいは採掘方法はというと、強いて言うなら「日々を健全に過ごすこと」だと言えます。というのも、我が家では毎週目標設定をしていまして、その目標が達成されるとマルが手に入るからです。

マルの運用風景(画像提供:筆者)マルの運用風景(画像提供:筆者)

週に1回、我が家では目標管理のための家族会議が開催されます。議事としては、まず前回の会議からこの日までの1週間、目標達成のために日々活動していたかを確認します。達成可否の判断は4人全員でするので恣意的にはなりません。

目標は毎週2つずつ設定していますので、最大で2マルを獲得できますが、一方で0マルの場合もあります。また、達成したとまでは言えないけど結構がんばっていたみたいな場合は0.5マルという評価になるため、目標の2つとも達成できずとも「まあがんばってたよね」ということになれば、0.5マルと0.5マル、合わせて1マルを得られることになるわけです。

さて、その目標とは一体どういったものかと言いますと。学校の宿題をやるだとか、手を洗う、歯を磨く、風呂から出たら髪を乾かす、というような生活習慣の基本的なことは目標にはなりません。ただし、基本的なことを「やる」は目標にはならないけど、「忘れないようにする」は目標になるといったさじ加減はあります。

筆者の最近の目標はというと「帰るときに何時に家に着くと連絡する」という夕飯の支度目線で大切な事項をきちんと報告することであったり、あるいは「次女に九九を教える」という、いかにも父親っぽいものもあったりします。子どもたちは「今日やった授業の復習をする」だとか、「9時までに寝れるようにテキパキがんばる」だとか、生活習慣の質を高めていくような目標をよく立てているようです。

マルの運用風景、目標部分(画像提供:筆者)マルの運用風景、目標部分(画像提供:筆者)

ちなみに目標は、達成したら次の新しい目標へと移るわけなのですが、生活習慣として定着するまでは目標として掲げ続けることになっています。そのため、翌週も同じ目標が設定されるような状況の場合は、獲得できるマルはせいぜい0.5マルといったところになります。

このマルなのですが、目標達成すると得られるというだけでなく、ほかにも任意のタイミングで、マルを唐突に子どもに与えることができます。そう、要するにご褒美としてのマルです。

例えば家事の手伝いをしてくれた、ものすごく勉強しまくった、テストがやたらと好調だったというときに「よし、じゃあ0.5マルあげようね」っていうことができるわけです。

一方で、ご褒美としてのマルがあるということは、罰としてのマルもあるのです。約束を破ったとか、嘘をついたとか、目標に掲げていることをまるで無視してやってなさすぎるとか、そういう「だめだよ」っていうことを、1、2回はふつうに注意するわけですが、何度注意しても改善されない場合に、マルの没収が発動するのです。

■仮想通貨を家庭で運用するメリット

お手伝いの報酬として、臨時のお小遣いをあげるというのは、わりと一般的に行われているようなのですが、直接的に現金にしてしまうと相対的な価値を定義しないとちょっと気持ち悪いことになったり、そもそもいちいち現金を渡すのが面倒だったり、小銭がないからごほうびを後回しとかにすると覚えておくのもこれまた面倒だったりするわけです。

マルならその場で無から生み出せるので、「ありがとうー、0.5マルつけておくねー」などと自由自在で楽なのです。また、長女と違い、次女はまだ年齢的に1人でお店に行ってはいけないことにしているため、現金でご褒美をもらってもあまり価値がないのですが、マルなら長女と次女で同じ価値を与えられるというのも良いところです。

何度注意しても改善されない場合に、何らかの罰を与えたくなってしまう心情があったとします。しかし、例えば来月のお小遣いを減らすという罰を与えた場合、それ以上減らせなくなったらもう無法地帯になってしまうのでしょうか。夜ごはん抜きのような罰は虐待になってしまうのでしょうか。このように、直接的な罰は、発動時点でその重みづけを確定しなければいけないため、どうにも効率が悪いのです。

一方で、マルの没収ならわりとカジュアルに行えるうえに、直接的ではなくむしろ概念的な罰だということとなります。マルを得るには、特別に褒められるような何かをするか、あるいは地道に一週間かけて目標を達成する必要があるので、1マル没収されてしまうのはなかなか痛手であると、子どもたちも認識しているようです。つまり、概念でしかないのにも関わらず効果のある罰だとも言えるでしょう。

マルは家族でお出かけをした際、おみやげ屋さんの買物で予算オーバーしてるけどどうしてもこれが欲しいというときに行使したり、外食時のデザートのアップグレードのために行使したりすることができます。だいたい1マルは100~300円程度に相当するような按配になっています。

また、10マル到達ごとに、1,000~3,000円程度までの書籍や文房具、雑貨などを買ってもらえたりします。10マル貯めるには5~10週間くらい地道に目標を達成し続けないといけないので、1、2マルで手に入るデザートのアップグレードをとるか、とにかく10マル貯まるまで我慢してカワイイ筆箱を買ってもらうかなど、考えながら過ごしているようです。

■「マル」運用で見えてきたもの

よく「子どもの仕事は勉強だ」などと言われたりもします。その勉強をせっせとやり続けることで労働対価としてマルが獲得できるみたいなイメージを持ってもらいつつ、一方で、悪さをすると積み上げたものが一瞬で失われるというのを、マルを通じて体感してもらえるかもしれない運用をしています。

ということで、家庭内仮想通貨はカジュアルに運用できるのでおすすめできる感じです。運用方法については筆者もまだ模索中なところがありますが、みなさんも模索しながらやってみてください。

株式会社ツルカメ UXディレクター
森田雄

東芝EMI、マイクロソフト、ビジネス・アーキテクツなどを経て、現在はツルカメ代表取締役社長、ネコメシ代表取締役CEO、Evolve Art & Design Japan理事。IA/UXデザイン、アクセシビリティ、ユーザビリティのスペシャリスト。主な著書(共著)に「UX侍~スマホアプリでユーザーが使いやすいデザインとは~」など。

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