増やす 2017.01.04 話題の「民泊」、ホストになるための準備と心構えとは

日本政府観光局(JNTO)の調査によると、2015年の訪日外国人旅行客の総数は、1,974万人。2016年は9月までの総数で1,798万人となっており、前年度9月までの総数と比較すると24.1%の伸び率となっています。このような外国人旅行客の急増に伴い注目を集めているのが、民家に宿泊する「民泊」です。家を提供する人(ホスト)が仲介サイトに登録を行い、宿泊希望者(ゲスト)がそれを見て申し込む、という形が一般的です。どうやってはじめるの? 儲かるの? 実際に自宅で民泊を行っている人にお話を聞きました。

Airbnbを利用して自宅の一室を提供

お話を聞いた人/井上裕介さん(35)
IT会社勤務。渋谷駅から徒歩5分ほどの場所にある中古マンションを所有。

井上さんは、30歳のときに築45年の2LDKのマンションを約4,000万円、35年ローンで購入。現在、民泊のマッチングサイト「Airbnb」を通じて、その一室をゲスト用に提供しています。

「当時は自宅で仕事をしていたため、住居兼事務所にできる物件を探していました。ちょうどリーマンショック後でマンションが値下がりしているときだったので、買うなら今だ!と思い切りました」

民泊のホストになる前は、ルームメイトがいて部屋を貸していたという井上さん。その部屋に2人宿泊可能なエクストラベッドを設置し、ゲスト用の部屋にしたので、初期費用は安価に済ませることが可能だったと言います。

集合住宅であるマンションで民泊を行う場合、居住者以外の人がマンション内をうろうろすることについて、不快感や抵抗感のある居住者も少なくありません。しかし、井上さんの住む物件では、SOHOや個人事務所として利用している人が多く、不特定多数の人が出入りすることに寛容だったことからスムーズに受け入れられました。現在、民泊による井上さんの収入は毎月15万円前後。月々の住宅ローン+管理費とほぼ同額分は稼げているのだそうです。

井上さんの部屋は、宿泊費5,000~7,000円(曜日により異なる)、清掃費7,000円という設定。近隣のホテルが1泊2万円程度であることから、それに比べると「安い」と感じてもらえることが多いのだとか。

ゲスト用の部屋には机、ベッド、エアコン、空気清浄機を設置。Wi-fiのID、パスワードなどが書かれたメモも常備されています

ゲスト用の部屋には机、ベッド、エアコン、空気清浄機を設置。Wi-fiのID、パスワードなどが書かれたメモも常備されています

壁紙は井上さんが自分で貼ったもの。ゲストに心地よく過ごしてもらうための演出の1つです

壁紙は井上さんが自分で貼ったもの。ゲストに心地よく過ごしてもらうための演出の1つです

ゲストを迎えるまでの流れは?

ゲストを泊める手順はどんな感じなのでしょうか。

「ゲストから予約の連絡が入ったら、まずはLINEやWeChatなどのメッセンジャーアプリのIDを交換し、何時の便でどこに着くのかをたずねて、家の最寄りのリムジンバスの停留所までのアクセス方法を詳しく教えます。そして、鍵の受け渡しとコミュニケーションのために停留所までゲストを迎えに行くようにしています」

ビジネスライクな関係ではなく、友人を迎えるようなつもりでおもてなしをするのが井上さんのやり方。ゲストとのコミュニケーションを大切にすることは、さまざまなトラブルの回避にもつながると言います。

「僕が民泊のホストをしている一番の目的は異文化交流。英語のスキルを磨きたいのと友達を増やしたいというのもあり、英語を話す海外のゲストを中心に泊まってもらっています。夜は一緒に飲みに行ったりもします」

広々としたリビングは、ゲストも自由に利用可能。音楽を聴いたり、DVDを見たりと思い思いに過ごすことができるようになっています

広々としたリビングは、ゲストも自由に利用可能。音楽を聴いたり、DVDを見たりと思い思いに過ごすことができるようになっています

トラブルの回避法・注意点

しかし、なかには夜中に騒ぐ、トイレにタバコを流す、などのマナー違反をするゲストもいます。「これらはゲスト募集の際に『ハウスルール』を明示することで回避できます」と井上さん。意外なことに今までで一番多かったトラブルは、部屋の種別に関するクレームなのだそう。

「きちんと部屋の説明を読んでいないのか、『貸切だと思っていたのに違うじゃないか』といったクレームを受けることがあります。海外からのゲストを受け入れるのなら、こうしたときに対応できるくらいの語学力はあった方がよいと思います」

民泊には、井上さんのように自宅の一室を貸すスタイルだけでなく、所有しているワンルームマンションの部屋などをまるまる貸切で提供する方法もあります。こちらはゲストに気を使う必要がない半面、ホストの目が行き届かないため、室内備品の盗難や破損、マナー違反行為などのトラブルが起こりやすく、代行業者を入れるなど、プロの手を借りるのが無難。その分、気軽にはじめるのは難しくなります。

民泊のホストになるおもしろさとは?

最後に井上さんに民泊のおもしろさについて聞きました。

「ゲストとのやりとりから鍵の受け渡し、清掃、トラブル対応まですべてをやってくれる代行業者がいくつもありますので、外国語が話せない人や仕事が忙しい人でもホストになることは可能です。でも、お金が目的ならば、他にもっと効率よく楽に稼げる仕事があるはず。メインはあくまでもゲストとの交流。それがいくばくかローンの足しにもなっている、というのが正しい民泊のやり方だと思いますね」

人が好き、コミュニケーションが好きで、なおかつ自宅に空き部屋があるのなら検討してみる価値はあるかもしれません。

TEXT:マネチエ編集部
PHOTO:PIXTA(TOP画像)、マネチエ編集部(文中)

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