増やす 2017.04.17 保険金が5倍になる!? 逓増定期保険のメリット・デメリット

逓増定期保険(ていぞうていきほけん)という種類の保険をご存じでしょうか。法人向けに開発された保険商品で、経営者に万一のことがあった場合、会社が保険金を受け取れる生命保険です。将来、起業を考えている方も、逓増保険について知ることで、リスク回避のノウハウをイメージしてみるといいでしょう。逓増定期保険は、死亡時の受取額が加入時の最大5倍まで逓増(次第に増加)します。今回は、そんな逓増定期保険について解説します。

逓増定期保険とは

逓増定期保険は、どのような保険なのでしょうか。この保険には以下のような特徴があります。

  • 終身保険ではない
  • 満期保険金の払い戻しがない
  • 死亡保険が最大5倍になる

まず、掛け捨ての生命保険であるという特徴に着目します。逓増定期保険は終身タイプではなく、期限付きの生命保険で、満期を迎えても満期保険金の払い戻しもありません。

ただし、死亡保障が最大で5倍になるため、いざという時には非常に高額な保障を受けることができます。更には保障期間中に解約することによって、今まで払い込んだ保険料の払い戻し(解約返戻金:保険を解約したときに契約者に払い戻されるお金)を受け取ることができます。この解約返戻金は加入から早期に高率になるので、掛け捨ての生命保険としては魅力的な商品です。

保険の保障額がどのように増加していくのかを理解するためには、逓増率という言葉を理解しなければなりません。逓増率(ていぞうりつ)とは、年々増えていく保障額割合を示しています。

たとえば、基準となる保険金が1億円で、6年目以降の逓増率が50%複利で逓増するとします。「50%複利」とは、元金と利子(50%分)を足した金額に対して、さらに利子を追加していく計算方法のことです。雪だるまのように利子が増えていくことで、保険金が増えていくイメージです。この逓増保険は、下記のようになります。

(例) 基準となる保険金額が1億円、6年目以降の逓増率が50%複利の場合
1〜5年目は、基準となる保険金額は変わらず1億円です。そして6年目には1億5,000万円、7年目には2億2,500万円、8年目には3億3,750万円、9年目には5億625万円(最大で5倍までなので実際は5億円)となります。

税制上の取り扱いも法律で細かく決められています。まず、保険満了前の払戻金があれば、そこで発生する収入は雑所得として課税対象となります。

具体的には、払戻金から、「その企業の貸借対照表に資産として計上していた一部保険料を引いた額」が課税対象の所得となります。その保険料を資産計上する割合は税法上定められており、45歳以上であれば2分の1、80歳以上であれば4分の3と被保険者の年齢によって変動します。

逓増定期保険のメリット・デメリット

逓増定期保険は戦略保険商品と呼ばれており、主に経営者や会社役員が加入する保険として人気です。では、法人はこの商品を購入することでどのようなメリットやデメリットがあるでしょうか。

メリット

  • 解約返戻金が早期に高率(数年で100%近い返戻率)になる
  • 保険会社や商品によっては保険料払い込み済みの終身タイプの保険に変更することができる
  • 保険料の一部は資産として計上されるので、資金が必要な際などは、逓増定期保険を担保に一時的な借入を受けることができる

デメリット

  • 掛け捨て型のため、返戻率のピークを逃すと受取額が減ることもあるので、戦略的な準備が必要不可欠
  • 払戻金は課税対象となるので、税制面での戦略も必要

逓増定期保険は戦略保険商品なので、使い方によっては非常に便利な反面、計画通りにいかなければ加入自体が無意味になってしまうことも考えられます。

逓増定期保険を使いこなすために

一般的な掛け捨ての生命保険としてだけでなく、その逓増率から財残準備や退職金としても活用できる逓増定期保険ですが、その特性を柔軟に使いこなすには優れた戦略が必要です。税制面での扱い、加入条件、解約時期、会計上の処理、キャッシュフローなどから総合的な判断をして、戦略を練り上げましょう。

逓増定期保険は経営者にとって大きな味方となる可能性が高い金融商品、検討してみてはいかがでしょうか。

TEXT:マネチエ編集部
PHOTO:PIXTA

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