増やす 2017.06.27 うちの会社にもいよいよやってきた! 確定拠出年金導入レポート (2)
企業型の確定拠出年金(選択制401k)の導入が決まったらいったい何をどうやって考えたらいいのでしょうか? 確定拠出年金初心者のとある小さな会社の社員の体験談を通じて、流れを簡単に学んでいきましょう。第2弾は実際に何を選ぶか、学ぶところからスタートします。
第1弾記事はこちら。
>> 【企業型】確定拠出年金をイチから紹介!説明会を徹底レポート(1) | マネチエ
「確定拠出年金」をはじめるまでのステップ
従業員が「確定拠出年金」をはじめるまでには、こんなステップが必要になります。
- 従業員説明会で制度の説明を受ける
- 会社から基本給付金などの告知を受ける
- 投資教育が実施される
- 各人が、掛ける金額を決定する
- 証券会社からスターターキットが届き、口座を開設する
- 掛け金分配を決めて、スタート
- 翌月の給与から口座振替がスタート
- 翌月から年金運用がスタート
はじめて受けた投資教育の内容とは?
初回の投資教育は2時間。9つの項目をみっちり教えてもらい、はじめて聞く金融や投資用語で頭がいっぱいになりました。
1. 確定拠出年金に取り組むための心づもり
ここでは、「確定拠出年金は個人の金融資産であり、利益が出ても損をしても自己責任だ」と説明がありました。リスクがあるから取り組まないと言う人がいますが、401Kにおいて掛け金は所得とみなされず、運用益は非課税となるため、節税効果だけでも取り組むメリットがあるとのこと。
また、目標利回りを設定して、分散投資と積立投資をすることをすすめられました。
2. 運用商品の種類
商品は、元本確保型商品(定期預金等)と元本変動型商品(投資信託)の2つに分かれます。
定期預金は預け入れた時の金利が満期まで保証されており、かつ日本の場合、1,000万円とその利息までは、ペイオフ(預金保険制度)の対象となるので、仮に預け入れた金融機関が倒産しても元本が保証されます。
基本的には投資をして自分の年金を増やすというのが確定拠出年金の方針ですが、「絶対に損をしたくない」「投資商品を考えるのが面倒」という人は、元本確保型の定期預金を選んでもいいという説明がありました。
しかし、定期預金なら自分の取引銀行でもできることなので、この機会に投資信託というものを理解しましょうと言われました。
3. 投資信託の仕組み
投資信託は、投資家から集めた資金を運用の専門家が株式や債券などに投資したり、運用する商品で、その成果は投資額に応じて分配されるのだそうです。個人では投資できない国や商品にも投資できますが、元本保証ではありません。
4. 投資信託の種類
商品の特性により大きく6つに分けられます。
運用商品の種類 | 分類 | 分類 |
---|---|---|
円で投資する | 国内/株式型 | 国内/債券型 |
外貨で投資する | 海外/株式型 | 海外/債券型 |
外貨及び円貨建て | 海外/不動産投資 | 海外/商品先物 |
外貨及び円貨建て | インデックス型 | アクティブ型 |
バランス型 (株+債券など、複数の商品が一定比率で) | 含まれているファンド | 含まれないファンド |
為替ヘッジ (為替変動の影響を排するためにコストを払うこと) | あり | なし |
また、商品の運用方針によってインデックス型とアクティブ型の2種類あるとのこと。
- インデックス型:日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)などの各種経済指数に連動させていくことを目標にしている商品。比較的手数料が安く、長期運用ではアクティブ型よりも運用成績が良いことも少なくない。
- アクティブ型:プロの運用者が独自の視点で銘柄を選び、市場平均を上回ることを目標に運用。投資先の選定によって利益が上下する。手数料はインデックス型に比べると高めだが、運用するプロの腕次第で、インデックス型よりも収益に期待ができる。
これらを良く考えて組み合わせることをすすめられました。
5. 投資信託に取り組むときに知っておきたい用語
さらに、確定拠出年金を行うに当たって、覚えておきたい用語も教えてもらいました。これで一気に理解が進みそうです。
投資用語 | 解説 |
---|---|
基準価格 | 投資信託の売買をするときの価格。一般に1万口当たりの価格 |
信託報酬 | 運用にかかる費用。ファンドことに異なり年間0.1〜3%まで |
信託財産留保額 | 売買の手数料。すべてのファンドにかかるわけではない |
リターン | 一定期間内の投資信託の収益率。数値が高いほど、パフォーマンスが高い |
リスク | 一定期間におけるリターンの振れ幅。数値が高いほどリスクが高い |
6. 「リスク」と「リターン」
(1)為替リスク
たとえば、海外証券で運用する投資信託を購入後に
円安になると ⇒ 基準価額が上昇する(利益)
円高になると ⇒ 基準価額が下落(損失)
ということになります。身近なことに例えて、この為替リスクを教えてもらいました。
たとえば海外旅行の時。帰国後に余ったドルを円に戻すときに、出国時より円安になっていれば、より多くの円に替えられ、円高になっていればその逆となります。それと同じことが投資の世界でも起こるわけです。
だから、購入時の為替レートと売却換金時の為替レートが大きく影響するのです。これが為替リスクと呼ばれるもので、海外証券を運用する際にはしっかりと理解しておかなくてはなりません。
(2)銘柄選択のリスク
この銘柄選択の良し悪しによって、参考指標(例えばTOPIX(東証株価指数))よりもパフォーマンスが優れている場合もあるし、よくない場合も出てきます。これを「銘柄選択のリスク」と呼ぶのだとか。だから、このリスクを避けたいのであれば、インデックス型を選べばいいということになります。
「なるほど~」とここは強くうなずくメンバーたちでした。一人だけ、山っ気がある社員だけが「それでは、大きく儲かりそうもない」とつぶやいていました。
(3)商品特性によるリスク
株式、債券、不動産投信、商品先物などそれぞれにリスクがありますが、1988年から2013年ころまでは、株式と債券の価格は反比例して動いていたこともあったそうです。
7. 分散投資のススメ
異なるリターンとリスクの特性を持つ投資商品を組み合わせて持っていれば、リターンの振れ幅が大きい場合でも、リスクを低減できるそう。例えば、1つの籠に卵を盛らないで、いくつかの籠に分ければ、籠を落とした場合にすべての卵が割れてしまう被害も分散されるということと同じです。この説明で何事も両方にリーチをかけておいたほうが、ダメージが少ないのだと理解できました。
8. ドル・コスト平均法
もし購入するベストタイミングがわかるとよいのですが、プロでもなかなかタイミングを計る投資はできません。そこで、一定の金額を継続的に投資して、投資商品の購入単価を平準化させることで価格変動のリスクを抑える投資方法が考えられました。これはアメリカなどでは、「ドル・コスト平均法」と呼ばれています。
常に価格変動のあるものを毎月同じ金額ずつ購入していると、その商品単価が高いときには少ない量しか買えず、安いときには多くの量を買うことができるので、長期運用に適していると言われているのです。
同じ金額で同じ投資信託を複数回に分けて投資することで、結果として一時に総額で投資するよりも購入価格を抑えて運用できることがあるということがわかりました。この説明を聞くと、長い時間をかけて少しずつ同じ商品に投資することが、少し怖くなくなりました。
9. 期待収益率のイメージを持とう
それぞれの運用方法には、異なるリスクや特性があり、期待収益率も違います。期待収益率とは、投資家が投資するにあたって、将来得られると期待できる平均的な収益率(リターン)のことです。
一般に、預金金利や国が発行する国債などの安全資産と比べ、株式など価格変動が大きい資産の将来の収益率は不確実なのだそう。ですからリスクが大きい分、資産の期待収益率は安全資産と比べ通常高くなるのだとか。どんな資産を何%持つかで、トータルの収益率(=目標利回り)が決まってきます。
例えば、年間5%の利回りを目標にするとします。そこで日本債券の投資信託ばかり(10年もので平均1.2%くらい)に投資しても達成は難しいのです。また、年間1%程度の安定運用で十分と考えているのに株式100%の投資信託を選択することは不要に価格変動リスクを取ることになってしまいます。
こうしたことを避けるためには、どんな資産に投資すれば概ねどんな収益率が期待できるのかざっくりとしたイメージでも良いので理解しておくことはとても重要なポイントになるのだそうです。
また、投資信託の運用報告書などには過去のリスクやリターンが出ていますので参考にするように言われましたが、いまひとつピンとこないのが正直なところでした。
いよいよ掛け金を自分で決める!
投資教育の時間が終わった後、はじめて聞く単語の量が多くて、何がわからないのか質問さえできない社員たちばかりでした。
しかし、今までの年金のように国が運用してくれるのではなく、自分の目標を決めて、投資する商品やその割合を決めなくてはいけないと徐々にわかってきました。
そしてまずやらなくてはいけないのが、自分の掛け金を決めることです。
会社から基本給付金3,000円が支払われますが、現在の給与の一部を今までのように現金で受け取らずに年金として積み立てる選択ができるのでトータル5万5,000円の積立が可能です。月額報酬(給料等)から換算される社会保険料や、所得税などの額が、掛け金の額によって変わってくるため、しっかり試算して一番節税メリットが大きい金額を考えるのがいいでしょう。
経理担当者が作ってくれた基本給による手取り額の一覧表を見ながら、各自が頭を悩ませることになりました。「うちの会社は、社会保険の届け出など事務作業を考慮したので、一度金額を決めたら、1年間は原則変更なしで」という指導もありました。
数日後、契約している運営管理会社から自分たちの会社が確定拠出年金の事業所として登録されたという知らせが届きました。その手続きも経理担当の人が書類をそろえて行ってくれたので、私たちが特に手続きはしなくて済みました。個人でiDeCoを申しこんでいる友人から、「手続きが複雑で、結構面倒だ」ということを聞いていたので、会社が取り組んでくれたおかげで楽ができるのだなと思いました。
そして、確定拠出年金に毎月いくら積み立てるかを記入して経理担当者に提出する日がやってきました。基本給付金3,000円だけの人や考え抜いた金額を出した人、積み立てる期間がもう短いからとMAXの5万5,000円の先輩もいます。
私は、毎月の生活にまだ余裕がないので、今年は少ない額ではじめてみます。
スターターキットが届く
そして、運営管理会社からスターターキットが届きました。各人がパソコンからサイトにアクセスし、自分の加入者コード(ID)とパスワードを打ち込み、ようやくログインできるようになりました。
スターターキットには、さまざまな規則や方針、変更届の用紙などが封入されていましたが、なかでも分厚いのが「運用商品一覧と商品選定理由」と商品説明資料。これを1つひとつ見ながら、自分が投資する商品や投資する割合を決めるようです。
2度目の投資教育説明会
いよいよ商品選びに本腰をいれることとなり、2度目の勉強会が開かれました。そこでは前回の勉強会をより具体的にし、主に運用商品の選び方と掛け金の配分をどうするかの説明がされました。そこで使われたのが、投資信託協会 が配布しているパンフレットでした。これは、申し込めば誰でももらえるガイドブックです。
再度強調されたのは、「積立て」を長期間することのメリットや意義とリターンとリスクの考え方、為替の変化による運用益への影響などでした。また日本と世界の両方を視野に入れることや分散投資の有効性などについてです。また気を付けるべきは信託報酬と信託財産留保額の%で、これらの手数料を頭に置いておかないと、結果損をしてしまう場合があるということです。
信託報酬とは、投資信託の運用や管理をするために必要な費用で、証券会社などの販売会社や、運用会社などに運用の成績が良くても悪くても、こちらの負担で支払わなくてはいけないものだそうです。運用している金額の一定割合が日割り計算されて、差し引かれるとのこと。だから、あまり高い信託報酬の商品を選んでしまうと、利益がでないばかりか、この信託報酬分がマイナスになってしまいます。
また、投資商品を解約するときにかかるコストが信託財産留保額で、もちろん「0」の商品もあります。膨大な商品も実は1つひとつ見ていくと似たようなものが多く、大きくは国内か海外か、インデックス型かアクティブ型か、株式か債権かなどをおおまかな目安として見て分類することからやってみようと思いました。
最初の手続きから3カ月、やっと今月の給与からはじめて積立金が引き落とされることになります。今月中には、どの商品をどんな割合で運用していくのかを決めなくてはなりません。定期預金のような元本保証の運用商品でいいやと最初は考えていましたが、勉強会を受けてみて、色々な商品に分散して運用を試してみようかなという気持ちになってきました。
コンサルタントのアドバイスや新聞の記事などを見て、以下のように投資商品の方針を大まかに決めました。
- 日本株式のインデックス型の商品 ・・・景気も良くなるそうで、堅実だと思ったから
- 海外株式のインデックス型の商品 ・・・アメリカの好景気はまだまだ続きそうだから
- ドル建て債券のインデックス型の商品 ・もし株式がダメな場合は、債権が上がるのでこちらもおさえで
- 海外新興国株主のインデックス型の商品
来年の今頃、運用結果を見てどう考えるのか、今は想像ができません。本を読んだり、日経新聞を見たり、ガイドブックを申請したり、なんだか投資や運用に前よりも興味が出てきた社内のメンバーです。
監修:DCプランナー 山根千鶴枝
TEXT:マネチエ編集部
PHOTO:PIXTA
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