増やす 2019.04.17 iDeCoの月払いと年払い、メリットとデメリットは?どちらを選べばいい?

個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」の支払い方法は従来「月払い」だけでしたが「年払い」が加わり、いずれかを選べるようになりました。それぞれどのような支払い方で、どんなメリット、デメリットがあるのでしょうか。どちらを選択するのが家計によいのかという点から比較してみます。

■iDeCo(イデコ)の月払いと年払い、何がちがう?

iDeCoは老後の私的年金として、20歳以上60歳未満の日本に住むほぼすべての人が加入できる制度です。2018年1月には拠出方法(支払い方法)がより自由になり、従来の月払いに加えて、年払いもできるようになりました。

「年払い」は「年に1回の支払い」ではなく「支払いを年単位で考えて決める仕組み」

年払いでは、年に1回だけ払うということではなく、掛金の拠出を「年単位」で考えて決められる仕組みです。毎年12月から翌年11月までを1つの単位(拠出単位期間)として、加入者がどの月にいくら拠出できるか事前に決めます(なお掛金の引き落としは翌月26日なので、納付月では「1月から12月まで」という単位になります)。

たとえば毎月1万円拠出し、ボーナスが出る6月と12月だけ拠出額を増やすといったことを事前に決めて申し込むことができます(引き落としは拠出月の翌月なので、拠出月を5月と11月にする必要があります)。この場合、年払いですが拠出(引き落とし)は12回となります。

「月払い」は従来からある「毎月支払う」方法

これに対して従来からあった「月払い」は拠出を「月単位」で行います。このため引き落としの回数は1年で12回となります。iDeCoの掛け金は職業や年金の加入状況によって上限が決まっています。以下の表が月払いと年払いの拠出上限額です。

職業月額上限年額上限
自営業者6万8,000円81万6,000円
会社に企業年金がない会社員2万3,000円27万6,000円
企業型確定拠出年金に加入済の会社員2万円24万円
確定給付企業年金と企業型確定拠出年金に加入済の会社員1万2,000円14万4,000円
確定給付企業年金に加入済の会社員1万2,000円14万4,000円
公務員等1万2,000円14万4,000円
専業主婦(夫)など2万3,000円27万6,000円

(表=イデコ公式サイトをもとに編集部作成)

iDeCoの支払いの基本は「月払い」で設定されています。当月の掛け金の金額が翌月の26日に銀行口座から引き落とされます。たとえば12月の拠出金は翌月の1月26日に引き落とされるわけです。残高不足になっても追加で納付できないので注意が必要です。なお「年払い」での拠出を行う場合には「加入者月別掛金額・変更届」を提出しなければなりません。

■iDeCoの「月払い」「年払い」それぞれのメリットと注意点

月払いのメリット ドルコスト平均法の恩恵が受けやすい

毎月決められた日に定額を積み立てるので「ドルコスト平均法」の恩恵を受けやすいというメリットがあります。たとえば投資信託を毎月一定額購入すれば、価格が安くなったときに多く購入でき、高いときには購入口数を抑えられます。すると購入価格を平準化し、平均取得価格を安くできる可能性があるのです。これがドルコスト平均法の長所です。

月払いの注意点 手数料がかかる

拠出回数が多い分、毎月手数料(国民年金基金連合会への収納手数料)が発生するので、コストがかかる点です。毎月拠出だと103円×12ヵ月=1236円かかります。

年払いのメリット 手数料が抑えられる

その点、年払いならその手数料を抑えることができます。月払いで1,236円かかるところ、年払いで拠出(引き落とし)を一度で済ませれば103円で済みます。また、ボーナス時期などに多めの拠出や、上限ギリギリまでの拠出も可能になります。

たとえば月の限度額が2万3,000円でも「毎月余裕がなく1万8,000円しか拠出していない」という人もいるでしょう。ボーナス時期に支払うなどの工夫をすれば、残りの5,000円の12ヵ月分6万円分の枠も使い、上限である27万6,000円(2万3,000円×12ヵ月)の拠出ができるかもしれません。コストを抑えて控除を最大限に受けられるのがメリットだと考えられます。

なお年払いでも、12月納付分(11月拠出)を0円にすることはできません(月払いでも同様)。iDeCoでは拠出額と毎月の拠出限度額の差額を翌月に繰り越すことができますが、毎年12月から翌年11月までを1つの単位(拠出単位期間)としているため、12月納付分(11月拠出)は翌年に繰り越しができないためです。

年払いの注意点 ドルコスト平均法の恩恵は受けづらくなる

一方で、注意点としてはドルコスト平均法の恩恵を受けづらくなることがあります。たまたま拠出する月だけ価額(投資信託の値段のこと)が高くなればそのぶん買付け口数が少なくなるなど、経済情勢の影響も受けやすくなります。加えて、iDeCoの年払いは前払いすることはできません。

たとえば、月額1万円を拠出する人が1月に加入したとします。11月までに合計11万円支払えばよいのですが、最初の拠出を6月にする場合は6万円までしか支払うことはできません。あくまでも経過した月分だけしか支払えないということに注意しておきましょう。

また、掛け金の拠出が10月・11月になる場合は小規模企業共済等掛金払込証明書が年内に発行されず、会社の年末調整に間に合わず、確定申告が必要になる可能性があります。

■iDeCoの月払いを選ぶほうが良い人・年払いのほうがよい人

元本確保型商品で「守る」運用をする人は「年払い」を

iDeCoでは元本確保型の商品に投資すると決めているなら、年払いにすべきでしょう。元本確保型の商品とは、たとえば定期預金や一部の保険などです。利率は微々たるものなのに、経費がかかるため、運用益よりもコストのほうが高くなり、元本割れするおそれもあるからです。年払いにしてコストを抑えたほうがいいでしょう。

投資信託などで「増やしたい」人は「月払い」を

投資信託などの価格変動商品で運用をしたいという人は、月払いを選択するのがよいでしょう。毎月コストがかかってしまいますが、毎月決められた日に定額拠出を行うため、ドルコスト平均法の恩恵を受けやすくなります。

■収支状況にあわせて月払いか年払いかを選択しよう

iDeCoは老後に備えた私的年金ですが、毎月家計を圧迫するような拠出の仕方では日々の生活が苦しくなりかねません。自分の家計の収支や投資の方針・意向を決め、月払いにするのか年払いにするのかをよく検討しましょう。

TEXT:マネチエ編集部
PHOTO:PIXTA

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