学ぶ 2016.09.05 住宅ローン「固定金利」と「変動金利」どっちがいい?

超低金利時代と言われる昨今、住宅ローンを検討している人にとっては「固定」にするか「変動」にするかで頭を悩ませていることだろう。住宅ローンを組む際に実は重要なのが、この金利タイプの選択だ。今回は筆者の経験も踏まえて、「固定金利」と「変動金利」の特徴と、選択時の注意点を解説する。住宅ローンを組むときの参考にしてもらいたい。

■住宅ローンの金利タイプとタイプ別特徴

住宅ローンを選ぶ際、頭を悩ませるのが金利タイプだろう。どの金利タイプを選ぶかによって、その後のマネープランにも大きく影響がでる。

そもそも住宅ローンの金利には大きく3つのタイプがある。「全期間固定型」と「変動型」、そして「固定期間選択型」だ。

◎全期間固定型

まず「全期間固定型」は文字通り、当初設定された金利・返済額がローンを完済するまで固定され、市中金利の動向には全く影響を受けない。総返済額がわかるため、将来のライフプラン設計もしやすいというメリットがある。借入実行時の金利は一番高いが、金利上昇場面で選択すると上昇前の低い金利のまま借りられるので、大変有利となる。

◎変動型

一方「変動型」は、市中金利によって半年ごとに設定しなおすもので、それに伴って返済額においての元本と利息の割合が変更される。月々や賞与時の返済額は5年間変わらないので、急激な金利の上昇があれば、返済額がほとんど利息部分となる可能性もあるため注意が必要だ。借入実行時の金利が一番低いのがこのタイプ。

◎固定期間選択型

「固定期間選択型」は、上記2つの中間と言える。当初に固定金利期間を定め、固定金利期間が到来する度に以降、同じ固定期間選択型にするか、変動型にするかを借り手が決めるものである。金利水準は全期間固定型と変動型の中間となる。固定期間は3年、5年、10年があり、固定期間が長くなるほど金利は高くなる。名称に「固定」と付いているので勘違いしやすいが、変動金利であることには違いないので、金利上昇リスクは避けられない。

■金利タイプ別選択割合の動向

住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)が実施している、「民間住宅ローン利用実態調査」による割合を見てみよう。

2015年(平成27年)9・10月
全期間固定型  28.1%
変動型     51.2%
固定期間選択型 20.7%

その5年前、2010年(平成22年)9・10月も見てみよう。
全期間固定型  23.1%
変動型     46.3%
固定期間選択型 30.6%

この5年間では全期間固定型と変動型を選択する人の割合が増加している。低金利が続いて久しい昨今では、恩恵を受けるのは全期間固定型と変動型であるという判断の現れなのだろう。変動型を選んだ人は、将来のことはわからないから、とりあえず低金利の恩恵を受けたい。全期間固定型を選んだ人は、今が底、これから金利は上昇するだろう、との考えであることは想像できる。

興味深かったのは、10年前、2006年(平成18年)同機関が行った、過去5年以内に民間ローンを組んだ人へのアンケート結果だ。70%以上が全期間固定型を選択し、変動型は7%に過ぎない。当時、今後金利は上昇すると多くの人が判断した結果だと考えられるが、その後の金利の動向については読者も知るところであろう。

■金利上昇リスク「固定は貸し手、変動は借り手」

ここで筆者の経験を記すことにしたい。2007年(平成19年12月)住宅ローンを組むことになった。銀行からタイプ別の特徴、具体的な金利について説明を受け理解はしたが、なかなか即答できるものではない。

当時もかなりの低金利で、筆者も今後は必ず上昇すると考えていた。なら当然全期間固定型を選択すればいいのだが、変動型との金利差が大きく、住宅ローンという多額の借金において、毎回の返済額の差は大変大きいものであった。

かといって、金利が上昇すると思っているのに変動型を選ぶ気持ちは全くなく、担当者の助言も、「固定期間選択型」であったため、3年の固定型を選択した。全期間固定型の金利上昇リスクは貸し手が、変動型は借り手が負うものであるが、固定期間選択型はその中間とも言える。

その後、金利が下降し続け、結果的には変動型を選択した方が有利ではあったが、そのことよりも3年ごとの金利タイプ決定に頭を悩ませているのが正直なところである。

住宅ローンは実行当初には優遇金利が設定されることが多い。銀行は新規顧客を獲得したいので、諸条件によって店頭金利より少し下げて提示してくれる。しかし固定期間終了時には、基本的にはその優遇を受けることはできない。当然金利は、同じタイプを選択してもかなり上昇することになり、大幅な返済額増加となる。筆者もその経験をし、大変苦労した。金利下降局面でこれなら、上昇局面だったらどうなっていたかと思うと恐ろしくなった。

固定期間選択型を選んだときには、そのリスクも十分考慮してほしいことを、経験したものとして特筆する。貸付担当者は数年先のことまでは助言してくれない。

■忘れてはならないのが「住宅ローン減税」

住宅購入を視野に入れている人は、物件選びと同じぐらい「金利の動向」、「金融機関の選択」に注意を払ってほしい。上述したように、固定を選んだ場合、金利が上昇してもリスクは貸し手が負うので、借り手に問題はおきない。意に反して金利が下降したとしても、借り換えたほうがいいかどうか、費用と利息軽減効果を試算して決める作業が必要となるぐらいである。

問題は変動型、固定期間選択型を選んだ場合である。金利上昇局面に入ったときが、子どもの大学費用、退職や仕事の減少により収入が激減する時期と重なった場合には、ローンが払えない事態に陥ることも十分考えられる。

であれば、全期間固定型を選ぶのが安心であるのはいうまでもない。しかし筆者も感じたように、金利差つまり月々の返済額の違いから、生活に直結することだけに、そう簡単に全期間固定型にと決めることはできない。

そこで、もうひとつ住宅ローンを借りる上で忘れてはならないのが、「住宅ローン減税」である。一般的な住宅の場合、平成31年6月居住までなら、年末借入残高の1%を、10年間、税額から引いてもらえる制度だ。現在、変動型の金利が1%未満であることを考えると、ローンを組むと利息以上の減税があるということになっており、おかしな話だ。今後制度の見直しがあってもおかしくはないだろう。

だとすれば、今年購入予定であれば全期間固定型を選んで、10年間の減税分を変動型との金利差に充てるという考えをすればどうだろうか。但し、10年後には生活は安定するという前提ではあるが。

「固定」か「変動」か。いくら考えても答えが見つかるものではない。借入額、返済期間、家計状況はそれぞれ違う。情報収集を怠らず、将来も見据えた上でシミュレーションをし、それぞれの状況にあったタイプを慎重に選ぶ必要がある。しかし決めたあとは悩まず、新しい住居での生活を思いっきり楽しんでもらいたい。住宅はやはり「夢」の実現のための買い物なのである。

TEXT:FP Cafe/ZUU online
PHOTO:PIXTA

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