学ぶ 2016.10.05 確定拠出年金で避けたい「こんなハズじゃなかった」

確定拠出年金(DC)において、掛金の拠出時に所得控除が受けられることや運用時に得られる利息や配当が非課税になるなど、加入メリットが喧伝されがちだ。他方で、実際に確定拠出年金を活用して、毎月の掛金を支払ったり、運用したりしていると遭遇し得る盲点がいくつかある。

その石コロにつまずかないように、注意する必要ももちろんある。確定拠出年金にすでに加入している人も、今後加入しようと考えている人も、隠れたデメリットにきちんと目を向けておかなければならないということだ。今回はそんな、確定拠出年金を使う際に気を付けたい「罠」について解説する。

■確定拠出年金の知られざる3つの「罠」

1つ目は、積立てた年金資産にかかる「特別法人税」の存在だ。現在は課税されていないが、もしも課税されることになれば、運用益ではなく資産全体にかかるため影響は大きい。

2つ目に気がかりなのが、日銀がマイナス金利の導入を決めた2016年1月以降の市況の変化だ。年金資産の運用ポートフォリオに組み入れた金融商品の種類によっては、運用益よりランニングコストである信託報酬の方がかかり、せっかく運用益が非課税になるメリットが活かされない可能性が出てきた。

3つ目は定年までのライフプランを考えると、将来転職や退職などで掛金の拠出ができないまま、口座手数料などランニングコストばかりがかさむ“運用指図者”になる人も少なからずいるだろう。

■年金資産にかかる特別法人税の怖さ

制度上は、確定拠出年金に限らず、確定給付企業年金など年金資産に対しては毎年税金がかかる。この税金を特別法人税と言い、正確には、(加入者拠出分を除く)年金資産残高に対してかかる「特別法人税」と、特別法人税にかかる「法人住民税」がある(合わせて1.173%)。

現在は、租税特別措置法の適用期限延長により凍結されている(平成28年度まで)。だが、撤廃されたわけではないことに留意すべきだ。もし凍結措置が解除されたら、年金資産全体が課税の対象となる。その年の運用益がプラスであろうがマイナスであろうがお構いなく、課税されるのだ。資産残高が大きい、定年を控えた50代の確定拠出年金加入者にとってはかなりの影響が出てくるだろう。

■掛金総額より年金受給額が低くなる可能性

今さら言うまでもなく、確定給付企業年金とは違い、元本保証型の商品から海外株式などを含む投資信託や、保険等リスク商品などで運用する確定拠出年金の場合、最終的な年金受給額は運用の結果次第で決まる。

マイナス金利の影響で、預金金利も低下しており、拠出した年金資産の大部分を元本保証型の金融商品で運用しているとすれば毎年の利益は微々たる額にならざるを得ない。たとえ月額数百円といえども毎月かかる口座管理手数料の方が高くつく可能性も高い。

同様に、運用ポートフォリオにおけるアクティブファンドの割合が高めな人も要注意だ。アクティブファンドとは、ファンドの運用責任者であるファンドマネージャーが株式や債券など、どの金融商品にどれくらい投資をするか決めるタイプの投資信託だ。一方、日経平均など一定の指標に連動して運用商品を決めていくタイプの投資信託がインデックスファンドである。アクティブファンドはこうした運用コストがかかるため、一般的にインデックスファンドの信託報酬より高めになりがちだ。信託報酬が年2~3%かかる商品も少なくない。

こうした商品を高い割合で保有すれば運用益よりも信託報酬をより多く支払う、言わば運用貧乏に陥る可能性がある。

■転職や退職で積立てた年金資産はどうなる?

確定拠出年金のメリットとして、転職などで会社が変わっても年金資産の持ち運びができること(ポータビリティ)がよく謳われるが、果たして本当だろうか?

たしかに確定拠出年金制度を導入する企業は増えつつあるが、大手企業からベンチャー企業へ転職したり、結婚退職でしばらくは専業主婦の予定など、確定拠出年金制度のない環境に身をおく人も少なからずいるだろう。これまでの企業年金であれば、転職や退職をした場合、手続きを経て積立てた年金資産は手元に戻る。だが、確定拠出年金の場合、60歳前に積み上げた年金資産を脱退一時金として受けとる要件は限られており、一時金を手にする可能性は低い。

■手元に年金資産が戻らない場合どうなるのか?

企業型から個人型の確定拠出年金として、年金資産を別の金融機関に移換しなければならない(要移換事務手数料)。転職(退職)後、6カ月以内に移換を行わないと、資産は国民年金基金連合会に自動的に移換されてしまう。自動移換の状態のままにしておくと、運用指図ができないのみならず、口座管理手数料は毎年きっちり資産から差し引かれる。さらに、いざ老齢給付金が受給できる年齢になっても、そのままでは給付を受けることもできない。

確定拠出年金は、中途脱退することは可能だが、積み上げた年金資産は原則60歳を迎えるまで手元に戻らず、口座を維持するためランニングコストもかかる。このように、確定拠出年金のメリットを享受するどころか、デメリットの方が大きくなってしまうケースがあることに留意しておきたい。

TEXT:海老原政子/ZUU Online
PHOTO:Thinkstock/Getty Images

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