学ぶ 2016.12.27 高額療養費制度を使えば、かかった医療費が戻ってくる?

高額な医療費がかかった場合、「高額療養費制度」という社会保険の制度と、「医療費控除」という税制面の制度の恩恵を受けることができます。この2つは混同されがちですが、まったく異なるものです。違いや「高額療養費制度」のしくみを見ていきましょう。

高額療養費制度と医療費控除の違い

高額療養費制度とは、1カ月にかかった医療費の自己負担額が一定額を超えていた場合に、超過分が健康保険から払い戻される保険給付の一種となります。

一方、医療費控除は、1年間に自己負担した医療費が10万円を超えていた場合に超過分を所得から控除できるもので、税金面の優遇措置の一環となります。どちらも高額な医療費がかかった場合の強い味方となるので、覚えておきましょう。

月の自己負担額はいくらになる?

病院の窓口で健康保険証を提示すると、70歳未満の人は通常3割負担となりますが、それでも医療費が高額になってしまうこともあります。こうしたケースに対処するため、医療費の1カ月の上限を定めたのが高額療養費制度で、国の公的制度になります。

高額療養費制度による自己負担額は年齢や所得に応じて異なり、決められた計算式によって算出されます。

【70歳未満の自己負担限度額の計算方法】

  1. 年収約1160万円以上:25万2,600円+(医療費-84万2,000円)×1%
  2. 年収約770~1160万円:16万7,400円+(医療費-55万8,000円)×1%
  3. 年収約370~770万円:8万100円+(医療費-26万7,000円)×1%
  4. 年収約370万円以下:5万7,600円
  5. 低所得者(住民税非課税):3万5,400円

たとえば、30代で年収400万円の女性が1カ月に100万円の医療費がかかったとすると、上記枠内のパターン3に該当します。

この場合、病院の窓口ではまず3割負担分の30万円を支払います。医療費の100万円全額が高額療養費の対象として認められた場合の自己負担額は、パターン3の計算式が適用されて下記の通りになります。
 8万100円+(100万円-26万7,000円)×1%=8万7,430円
かなり抑えられることがわかります。

すでに窓口で30万円支払っているため、
 30万円-8万7,430円=21万2,570円
が、高額療養費制度で戻ってくるという計算になります。

ただし、高額療養費の対象となる医療費は公的医療保険が適用される診察代や薬代のみ。対象とならないものも以下のように存在します。

  • 保険が適用されない自由診療の医療費
  • 差額ベッド代
  • 入院中の食事代など

また、医療費控除の対象となる通院のための交通費も、高額療養費の対象とはならないので注意が必要です。

高額療養費制度を最大限に活用するポイント

高額療養費制度は月初から月末までの医療費の合計額を基準にするため、月をまたいで入院してしまうと、それぞれの月ごとに分けて計算されてしまいます。緊急を要さない病気で入院する場合は、期間がどれくらいになるかを医師に確認し、なるべく月をまたがずに入院できるよう日程を相談してみましょう。

また、高額療養費制度では同じ人が1カ月間に複数の病院にかかった場合や、世帯を共にする人(同じ健康保険の人)が1カ月にそれぞれ病院にかかった場合の負担額を合算することができます。

合算する場合の医療費は、以下のように計算します。

  • 月ごと、同一世帯の人ごと、受診した医療機関ごとにそれぞれ計算する
  • 同じ医療機関でも医科入院、医科外来、歯科入院、歯科外来に分けて計算する

ただし、70歳未満の場合、上記の基準によって算出した1カ月の自己負担額が2万1000円以上の場合のみ合算することができます。同じ健康保険の人の医療費をすべて合算できるわけではないので注意が必要です。

高額療養費制度の申請方法

申請先は加入している保険者(健康保険事業の運営主体のこと)によって異なるので、保険証に記載されている保険者に問い合わせましょう。国民健康保険の場合は、自分が住む市区町村の国民健康保険の担当窓口に確認してください。申請の際は、健康保険証、医療費の領収書、印鑑、振り込み口座がわかる通帳などが必要になります。

高額療養費の申請には、事後に手続きする方法と事前に手続きする方法の2通りがあります。高額療養費が後から払い戻されるとはいえ、振り込まれるまでには3~4カ月程度かかるのが一般的なため、窓口でまとまったお金を一時的に立て替えるのは負担が大きいという人も多いでしょう。

あらかじめ長期にわたって入院するなど、高額な医療費がかかると予測できる場合は、事前に「限度額適用認定証」を申請すると、窓口での支払いを自己負担額のみですませることが可能になります。この認定証は、自己負担限度額を超えるかわからない場合でも、支給申請をすることができます。

高額療養費の超過分が払い戻されるまで待っていられないという人には、「高額療養費貸付制度」というものがあります。これは高額療養費支給額の約8~9割を無利子で借りられる制度です。市区町村や健保組合などによって、貸付金の割合や貸付までの期間に違いがあるので、加入している健康保険組合や市区町村の国民健康保険の窓口に問い合わせてみましょう。

利用する際は、高額療養費制度の申請をする際に一緒に申し込んでしまうのがおすすめです。ただし、この貸付制度がない市区町村もあるので、事前に確認するようにしてください。

正しい知識を持って万一に備えることが大切

高額療養費制度は保険証を持っている人、つまり国民健康保険や会社の健康保険に加入している人なら、誰でも利用できます。万一に備え、正しい知識を身につけ、しっかり制度の恩恵をあずかれるようにしましょう。

また高額療養費の請求手続きは、診療を受けた月の翌月1日から2年となっています。2年以内ならさかのぼって申請し、医療費の払い戻しを受けられるので、心当たりがある人はさっそく医療費の領収書をチェックしてみましょう。

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