学ぶ 2017.02.08 基本中の基本!「デフレ」と「インフレ」のメリット・デメリット

新聞やニュースで見聞きする「デフレスパイラル」や「インフレターゲット」といった言葉が、私たちの貯蓄や資産運用、年金にまで密接に関係していることをご存じですか? 改めて「インフレ」と「デフレ」がどのような影響を及ぼすのか、基本から抑えましょう。

■インフレ、デフレとは?

・インフレ(インフレーション)

私たちが日ごろ購入する物やサービスの価格(物価)がずっと上昇し続ける状態です。企業の商品価格が上がると利益が増え、増益分から従業員の給料も上がります。家庭のお財布に余裕ができると、新たな消費が生まれて商品価格の上昇へ、というサイクルができます。物価の上昇は年2~3%が安定ラインだといわれています。

好循環のインフレに対し、価格が上がると同時に仕入れ価格も上がることで利幅があまり増えず、給料への反映が十分に行われないインフレもあります。この場合は、消費者の所得はほとんど増えず、上がり続ける物価が家計を圧迫する状態に陥ります。

・デフレ(デフレーション)

一方、デフレ(デフレーション)は、物やサービスの価格(物価)が下がり続ける状態です。バブル崩壊以降の日本は、多少の波はあるもののデフレの状態が長く続いてきました。所得が増えないために消費が落ち込むと、商品の市場価格は下げなければならず、企業の業績も悪くなります。業績悪化で従業員の給料カットやリストラが行われると、ますます消費が冷え込むという悪循環が「デフレスパイラル」です。

■資産運用に「インフレ」と「デフレ」はどう響く?

まず、インフレとデフレが株価、金利、為替、現金・預貯金の価値、それぞれにどのように影響を与えるのか、図で整理します。

インフレ・デフレによる経済の変化

 インフレデフレ
株 価上昇下落
金 利上昇下落
為 替円安へ円高へ
現金・預貯金の価値下落上昇

※出典:くらしとお金のワークブック ~FPと考える生活設計~(日本FP協会)

インフレのときは国内でのモノやサービスに対する需要が上がったり、ものをつくるコストが上昇したりするため、物価が上がります。そのため、株価や金利は上昇し、為替は円安へと動きます。一方で、例えば1万円で購入できる商品やサービスは減ることになるため、現金および預貯金によるお金の価値は下がります。逆にデフレのときは物価が下落し、株価と金利も下落、為替は円高へ進み、現金や預貯金の価値は相対的に上がります。

インフレやデフレによって、お金そのものやお金を取り巻く環境は変わります。資産運用で貯蓄を増やしていくには、それらの特徴を活用することが大切です。

・ インフレのとき

株式、不動産、金、外貨など、リターンを期待して分散投資を。現金や預貯金の価値は相対的に減少するため、ここでは物価の上昇よりも高い利回りを目標にしましょう。

・ デフレのとき

株価や金利は下がりますが、相対的に現金の価値は上がります。そのため、なるべく現金や預貯金で保有するとリスクが少なくなります。タンス預金はデフレ時代の王道の貯蓄方法です。また、投資を考える場合は、元本割れリスクのない個人向け国債や、低リスク低リターンの高格付け社債が、デフレのときに最適です。

年金に及ぼす「インフレ」と「デフレ」の影響は?

日本の公的年金制度において、私たちが支払っている保険料は、現時点での年金受給者へ充てられています。これを「賦課(ふか)方式」といいます。一方、自分の老後に備えて自分で支払っていくことを「積立方式」といいます。

【賦課方式の年金の特徴】

現役世代の給料から差し引かれた保険料を原資とするので、インフレが起きても年金の価値は目減りしにくく、その時代の経済状況に合わせやすいという面があります。ただし、現在の少子高齢化社会にみられる「現役世代<年金受給世代」の状態で賦課方式の年金制度を維持するためには、保険料の負担増や年金削減が必要になります。

【積立方式の年金の特徴】

民間の保険と同じく、現役時代に自分で積み立てたお金を原資として運用収入を活用します。制度改正で関心が高い“iDeCo(イデコ)”のような確定拠出年金も積立方式です。インフレによって価値の目減りを起こし、受け取り時には場合によって実質的な“元本割れ”を起こしてしまう可能性もあります。

今後も少子高齢化が進むことから公的年金制度に不安を感じ、「自分の老後は自分で」と積立方式の“個人年金保険”への加入を検討する人もいることでしょう。ですが、リタイアまでに時間のある若い人が加入するのは、あまりおすすめできません。というのも、政府と日銀はデフレ脱却のため、消費者物価指数を年2%目標で上昇(インフレ)させると2013年に明言していることから、将来、受給額の価値が目減りしていることも起こり得るのです。同じ積立方式であれば、iDeCo(個人型)や企業が加入している確定拠出年金で、税の優遇を受けながら投資商品で積極的に運用していくほうが良さそうです。

長らくデフレの時代から抜け出せない状態が続いていましたが、政府は年2%のインフレに向けて政策を打ち出しています。私たちの資産形成のスタイルは、今まさに「現金で持っていれば安心」から「積極的に手持ちの資産を運用」へ転換する時期に入ったといえるでしょう。

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TEXT:マネチエ編集部
PHOTO:PIXTA

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