学ぶ 2017.04.24 「はじめて株式投資をしてみた」第1回 投資相談-証券口座申し込み編

投資にチャレンジしたいけど、一体何から始めたらいいんだろう。投資を初めてやってみようと思う人が考える素朴な疑問を、専門家にぶつけながら、実際に株式投資を体験してみましょう。今回は、株式投資初心者である会社員の岡本君(仮名・24歳)の投資入門をレポートします。

■まずは投資の目的を確認しよう

某IT企業に勤務する岡本君は、入社3年目のサラリーマン。貯金もできるようになり、できれば本業以外の収入源として投資をしたいと思っていますが、一体何から手を着けたらいいのかまったく分かりません。そこで、金融や投資の知見をもつ経済アナリストの増井麻里子さんに、はじめの一歩から教わることにしました。

登場人物

【体験者】
岡本君(仮名)

関東在住、独身(24)。大学卒業後、IT企業に新卒入社した3年目のサラリーマン。大学時代にFXを経験したことはあるが、株式投資は未経験で、証券会社に口座はナシ。

【先生】
経済アナリスト増井麻里子さん

国内大手証券会社、ヘッジファンドで勤務後、格付会社ムーディーズで自動車、鉄鋼、海運、空運、医薬品など多業界の分析を担当。国際協力銀行(JBIC)を経て2014年7月独立。

1. 投資の「目的」をはっきりさせよう 

はじめまして。投資はほとんど初心者で分からないことだらけですが、よろしくお願いします。
はじめまして。「ほとんど」と言うと、株式投資以外の投資の経験はありますか?
大学時代に友人のマネをしてFXをやったことがあります。それからバーチャル株式投資もやったので、チャート(株価の動きを見やすくグラフにしたもの)の見方とかは少しわかります。FXの収支は少しプラスでしたが、株式投資は銘柄選びのポイントが全然わからなくて、頓挫しました。
なるほど、ご経験はわかりました。それではまず、投資の目的をはっきりさせましょう。目的をはっきりさせることで投資商品選びの基準が見えてきます。投資をしようと思ったその理由、投資できる予算額と目標にする利回りなどを教えてください。
仕事にも慣れてきて時間的に余裕もできてきましたし、ようやく少し貯金もできてきました。今回は、まず30万円で投資をはじめてみて、本業以外にも将来的に副収入が得られればいいなと考えています。ただ、長期間株式の動きをみるよりは、どんな結果を得られるか知りたいので、できれば短期で結果が見たいなと。利回り8%って高望みでしょうか?
金融商品を選ぶ時の参考になると言われている、「72の法則」をご存知ですか? 岡本君の30万円を2倍にするのに、何年かかるのかすぐに計算できる式です。
「金利(%)×年数(年)=72」に当てはめてみましょう。8%×?年=72ということは、9年ですね。9年で倍になるってどうですか?
60万円ですよね?嬉しいです!
毎年8%稼ぐのは、結構大変だと思いますが……。ハイリスク・ハイリターンの投資商品になるかもしれないです。ちなみに個人向け日本国債の変動10年の表面利率(毎年受け取る利子の額面金額に対する割合のこと)が0.05%です。大手3行の普通預金の利息は0.001%で、100万円預けても1年間で10円しか付きません。それでは、どんな投資商品があるのか、順を追って勉強していきましょう。

2. 投資できる商品を学ぼう「好きな会社の株を買っちゃダメなの?」

2. 投資できる商品を学ぼう  「好きな会社の株を買っちゃダメなの?」
株式投資、投資信託、不動産投資の3種類についてメリットとデメリットをお教えしますね。まず株式投資は自分で投資する企業を決めます。つまり株の銘柄を決めて買うことで株主になり、株価が上がれば利益が出ます。
どこの会社がいいか、全然分からず銘柄を決められなくて、前回挫折したんですよね……。
その時、業界の動向は勉強しましたか?気になる会社があったら業界本を読んだり、ネットでニュースをチェックしたり、その会社のIR情報をチェックしたりするのは、最低限必要です。少なくとも過去3年の決算データを見るといろいろ分かってきますよ。
わあ~大変そうですね(汗)。好きな会社とか選んじゃダメですか?CMがカッコイイとか。
危険です!株を買っちゃったらもっと好きになるでしょう?もし株価が下がっても、その会社をひいき目で見るからなかなか売れなくなります。いわゆる「損切り」ができなくなってしまいます。
危険です! 株を買っちゃったらもっと好きになるでしょう?
なるほど、そうですね!あとFXをしていた時に、値動きを追えない時間があるとストレスだったことを思い出しました。今は昼間は働いていますし、そういうストレスが嫌なんです。
1日のうちに株をひんぱんに売り買いするデイトレーダーでなければ、ずっと値動きをチェックする必要はないですよ。でも朝、新聞を読んで大きな事件をチェックして、昼はネットニュースをチェック、週末に業界動向などの本を読む、くらいならできるでしょう?あとは会社の業績修正のニュースを見るくらいかな。FXのように張り付いていなくても大丈夫ですよ。
それはホッとしました。最近よく耳にする「投資信託」はどうですか?
投資信託なら、投資運用会社のプロが自分の代わりにいろいろな会社の株を運用してくれるから、手軽に分散投資ができますね。たとえば、A社の株を1株だけ持っていたらこの会社の株が大きく下落するとダイレクトに影響を受けますが、投資信託なら他の会社も入った詰め合わせ、つまり「ポートフォリオ」が組まれているので、受ける影響は少なくて済みます。
僕の30万円の予算だと、たとえばトヨタの株は買えないけど投資信託なら持てるのですね(トヨタ株の投資額は3月29日現在、62万円程度から)。
海外企業の株だって持てますよ。ただ、投資信託は、プロに任せるので販売手数料(ゼロの商品もある)や運用手数料(信託報酬)がかかるので覚えておいてください。最後に不動産投資です。今はマイナス金利で、住宅ローンも借りやすいですね。ただし、住宅ローン金利は2016年夏に底打ちし、3月末に一斉に引き上げられたので、今後は需要が弱まる可能性が高いです。
頭金0円でマンション購入なんていう広告もありますが、頭金30万円で不動産投資ができるのでしょうか?
副業というと「サラリーマン大家さん」をやろうというイメージがありますね。確かに比較的簡単に大家さんになれますが、物件の修繕にお金がかかったり、空部屋になると収入がなかったり、年々物件が古くなるなど、将来的には投資環境が厳しくなるかもしれません。
【投資商品それぞれのメリット・デメリット】
 メリットデメリット
株式投資
自分で企業を決めて株を買う
・株価は、景気や企業の業績と連動して、1日に2~3%動くことはよくある。だから業界や企業の選び方を間違えなければ、株価が上がって、定期預金よりお金が増やせる。・投資した企業がうまくいかない場合、元本割れ(買った時より価値が下がる事)することもある。
・投資しようと思う業界や企業の決算資料を読んだり、株価チャートを見たり、業績修正のニュースを見たり、関わりのあるニュースをチェックするなど、勉強する努力が求められる。
投資信託
運用会社に運用してもらう
・投資運用会社のプロがどこに投資するか判断してくれる。例えば株式投資信託であれば、手軽に色々な企業の株に分散して投資ができる。
(もしその中のある企業の株が急落しても、単独で保有するよりは下落の度合いは緩和される。)
・商品が複雑で、多岐にわたるので、どんな投資信託を選んだらいいのかがわかりにくい。
・基本的に分散投資なので、大きく増やせる可能性は比較的低い。
・販売手数料や運用管理手数料がかかる。
不動産投資・現在は、歴史的にみて住宅ローンの金利が低い。
・良い物件であれば、安定収入が得られる。
・特別なことが起こらなければ手間はそれほどかからない。
・投資物件に常に居住者がいる状態でないと、収入がない。また、将来の価値を読み誤ると、投資環境が厳しくなる。
・物件の修繕費などお金がかかる。
・家賃交渉など、人とのやりとりが必要。

私としては、株式投資をおすすめしますね。投資信託も悪くないですが、自分で決めてどこかの株を買おうとすることで、しっかり勉強するはずですし、個別株を買ってみるのが一番上達の近道と思うからです。数万円で買える株もあるので、無理なく始められると思いますよ。

【増井先生のワンポイントアドバイス】

◎銘柄選びには2つの方法がある
株式の銘柄選びには「トップダウン」と「ボトムアップ」の2つのアプローチ方法があります。

「トップダウン」は国や地域を決め、次に業種を絞って、最後に個別銘柄を決めるもの。「ボトムアップ」は、まず個別銘柄に注目して、投資銘柄を積み上げていく方法です。初心者の方は両方の視点から考えてみると、その違いが分かっておもしろいと思います。

3. 証券会社に口座をつくろう「どこの会社がいいのかな?」

先生からのレクチャーを聞いて、やはりちゃんと業界の勉強をして自分の力で投資する会社を選ぶことにした岡本君。人任せで後悔するより、買える範囲の会社を吟味することにしました。

2. 投資できる商品を学ぼう  「好きな会社の株を買っちゃダメなの?」
投資する商品については、なんとなくイメージができました。ハイリスク・ハイリターンかもしれないけど、やはり株式にします。でも、そもそも、どこの証券会社を選んだらいいんですか?
証券会社には、昔からある対面の証券会社とネット証券会社がありますね。その大きな違いは、あなた専任の営業担当がいるかどうか。対面の証券会社もネット対応はしていますが、やはり手数料の安さからいうとネット証券でよいのではないでしょうか?
なるほど、ネット証券のなかで手数料やアプリの使い勝手を比較検討してみようと思います。通勤時間に株価を見て、比較検討したいから、スマホで使いやすいというのは最優先事項かもしれません。
それからもう1つ、扱っている商品が同じようで違います。日本の株ならどこでも買えますが、投資信託や外国株は買えるところと買えないところがあります。
3. 証券会社に口座をつくろう 「どこの会社がいいのかな?」

■証券会社の口座開設はネットで申し込み

30万円の予算だと、だいたい何銘柄くらい持てるものでしょうか?
それは株価にもよりますね。30万円くらいで1銘柄でもいいですし、2銘柄くらい買ってもいいのではないでしょうか?ご自身が詳しい業界や興味がある分野はありますか?
うーん、仕事柄IT企業はよく知ってるけど、興味があるのは教育関係、学習塾とかかなあ?
では教育分野から始めてみてはどうでしょうか。株式の扱いって、経験を積めば積むほど上達するのですよ。スポーツや楽器と同じです。やみくもにやってもうまくならないけれど、まずはきっかけをつかんで、セオリー通りにやってみる。そして、勘所を体感するのが大切です。きちんと考えて取り組むことで業界動向や株価の動きのつかみ方のコツがだんだん分かってくるんです。
本当ですか!今日からニュースを見る目が変わりそうです。まずは、気になる業界を絞り込んで、勉強を始めてみます。今日はありがとうございました。次回もよろしくお願いします。

【増井先生のワンポイントアドバイス】

◎お金に働いてもらうのが投資。でも無理は禁物
岡本君は、「投資でどうやったら資産形成できるのかイメージが付かない」と、今まで投資に踏み切れなかったそうです。でもお金を眠らせていても、今の低金利時代には何も生み出しません。

自分で考えて投資をすることで、お金が自分で勝手に働いてくれて、増えるとしたら嬉しくありませんか?しかし、ここで注意したいのは、だからと言って人にお金を借りて投資するとか、生活費を切り詰めて投資資金をつくってはいけないということ。あくまでも自己資金、しかも「余裕資金」でやるのが鉄則です。なけなしのお金で投資しても、焦ったりしてしまい、判断が間違いがちになり、増やすことは難しいでしょう。

第2回「株を買ってみた」へ

投資の目的をおさらいし、銘柄選びの基本について学んだ岡本君。証券会社の口座開設も申し込みました。いよいよ実際に証券会社のサイトで銘柄選びをしてみます。さて岡本君はどこの株を買うのでしょうか?

>>「はじめて株式投資をしてみた」第2回 口座開設-銘柄選び編

TEXT:マネチエ編集部
PHOTO:森口新太郎

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