学ぶ 2017.07.31 「はじめて株式投資をしてみた」第2回 口座開設-銘柄選び編

ビギナーが体当たりで投資を体験! 前回は専門家のアドバイスをもとに、株式投資の第一歩を踏み出した岡本君(仮名)でした。第2回は実践編、いよいよ口座開設から銘柄選びを行います。気になる投資入門の行方をレポート!

IT企業に勤務するかたわら、副収入として株式投資を考える岡本君。初心者として、銘柄選びの疑問を経済アナリストの増井麻里子さんにぶつけていこうと意気込みますが、その前に立ちはだかったのが証券会社の口座開設です。マイナンバーに本人確認と、本業の合間をぬった手続きに思わぬタイムロス。ビギナーの株式投資らしく、予想外の船出になりました。

登場人物

【体験者】
岡本君(仮名)

関東在住、独身(24)。大学卒業後、IT企業に新卒入社した3年目のサラリーマン。大学時代にFXを経験したことはあるが、株式投資は未経験で、証券会社に口座はナシ。

【先生】
経済アナリスト増井麻里子さん

国内大手証券会社、ヘッジファンドで勤務後、格付会社ムーディーズで自動車、鉄鋼、海運、空運、医薬品など多業界の分析を担当。国際協力銀行(JBIC)を経て2014年7月独立。

■フィールドをネット証券に絞る! まずは口座を開設してみた

フィールドをネット証券に絞る! まずは口座を開設してみた

前回は、経済アナリスト・増井麻里子さん(以下、増井さん)のレクチャーで株式投資への知識を学びました。いよいよ、証券会社のセレクトに入ろうと思います。

僕の場合、パソコンを開くのがおっくうなので、家でWebを見るのはほとんどスマートフォン。銘柄を比較検討するなら、アプリやスマートフォンサイトの使い勝手がキモになりそうです。増井さんのおすすめと銘柄チェックのインタフェース、アプリの使い勝手をトータルに判断して「SBI証券」に決定しました。

〜SBI証券から書類が届くも、いきなり問題が!〜

ネット証券のメリットは「手数料の安さ」(増井さん)と言いますが、申し込みや手続きがWebで行えるのも魅力ですよね。画面から申し込んだら、即、取引ができそうです。

……と思いきや、申し込みから口座開設まで、意外に手間取ってしまいました。何と、申し込んでから取引がスタートできたのは1カ月半後……。まあ、マイナンバーの再取得に手間取って1カ月ほどタイムロスしちゃった部分はあるんですけどね(笑)。

通知カードの紛失が足を引っ張ってしまいました。確認・手続きの前にマイナンバー書類のチェックを強くおすすめします。僕の場合は郵送で手続きをしたので、下のステップ4が必要になりました。これは、Webアップロードができていれば、必要なかったそうです。

ステップ

【必要な書類】
ステップ1 本人確認に必要な運転免許証などの「本人確認書類」およびマイナンバー通知カードまたは個人番号カードなど、マイナンバーを確認できる「個人番号確認書類」

ただ、ネット証券だからといって、Webだけでワンストップで手続きが終わるわけじゃないんです。僕が手間取ったのは本人確認です。「Web/メールで本人確認を行う」を選択しましたが、時間が取れずに処理できなかったところ、1週間後には自動的に郵送手続きに切り替えられてしまいました。

郵送手続きの場合、書類を投函してからSBI証券の私書箱に届くまで3営業日ほど。さらに本人確認手続きで2~3営業日がプラスされてしまいます。このタイムラグはちょっとキツかったなぁ。

SBI証券から届いた書類の数々。記入・返送を考えると、郵送だと手間に感じてしまいました。SBI証券から届いた書類の数々。記入・返送を考えると、郵送だと手間に感じてしまいました

あと、都銀でWebサービスの登録をしておけば、即時入金も可能なのだそうです。それを知らなかったために入金処理が、スムーズにいかなかったのも反省材料のひとつでした。

【増井先生のワンポイントアドバイス】

岡本君が困惑したように、ネット証券も口座開設にはいくつかのフローがあって、即日取引ができるというわけにはいきません。いざ銘柄を選ぼうと思っても、開設に時間と手間がかかってはモチベーションもダウンしてしまいますよね?必要な書類、手続き、所要日数をしっかり調べて、短期間で確実に進めていきましょう。

■はじめての購入だけに悩む……銘柄選びは二転三転!

はじめての購入だけに悩む……銘柄選びは二転三転!

〜銘柄選びは思ったよりずっと難しい〜

いろいろありましたが(笑)、何とか口座を開設。さっそく購入する銘柄選びに入りたいと思います。まず、僕がチェックをしたのは教育業界、具体的には学習塾などの銘柄です。将来、その方面に転身したいと思っているので、業界研究がてらリサーチしてみたというわけです。

だけど、ピンときた銘柄はなく、しかも業界的にニュース、トピックが常に流れているわけじゃないので、情報収集にも限界を感じました。日々働きながらのリサーチなので、業界・企業を深く研究するほどの時間はありません。自然に情報が入ってくる方法は何かないのかなぁ……。

次にフォーカスしたのが、航空、運送、化粧品、Web・情報通信業界です。これ、一見バラバラのように思えますが、僕的には「友人が勤めている業界」枠なんです(笑)。友人とはSNSなどで密にやり取りしているから、自然に情報が入ってくるのでは?と、そんな目論見からリストアップしてみたわけです。だけど、30万円という資金を考えてみると、候補として選べる企業がある程度限られてしまうことも分かってきました。

この時点での購入候補、注目株がこちら。1つの業界にすごく興味があったり、知識を持っていたりするわけじゃないので、よく言えばバラエティに富んだ、正直バラバラな並びですが、企業を具体的に研究するプロセスは、とても勉強になりましたよ。

「スターバックスのようにコーヒーの株主優待があったりするかな?」と思ってドトールを調べてみたら……えっ、よく駅ビルで見かける「洋麺屋 五右衛門」って、ドトールがやっているお店だったの?とか意外なビジネス展開に驚いたりしました。業界地図、事業展開の構造などなど、株式投資という以前に、ビジネスの見方が変わったような気がしました。

最終候補は上記の5銘柄に絞った!と言いたいところですが、まだまだ僕の銘柄選びは終わりません。

イギリスのEU離脱問題、朝鮮半島などなど、国際報道は不穏なニュースばかり。グローバル展開している企業だと、業績を読む要素が多岐にわたってしまいそう。投資に割ける時間が少ない僕としては、ちょっと避けたいところです。そこでもう一度候補を検討し、「国内で安定したビジネスをしている」企業に絞って再考することにしました。

〜ようやく絞り込み、増井先生に相談!〜

そして、最終的にこの2つの企業に絞り込みました。

選んだ理由は「身近な企業かどうか」ということ。「北の達人コーポレーション」は朝のニュースで取り上げられていましたし、定点チェックしているYahoo!ファイナンスでも話題にのぼっている。「力の源ホールディングス」は、皆さんご存じのラーメン屋「博多 一風堂」チェーンを手がけています。クールジャパン機構のサポートもあり、ニュースには事欠きません。

銘柄選びも最終局面ですが、公式サイトで開示されているIR情報をスマホで見ていても、意外に苦にならない自分に驚きました。決算情報や営業利益の推移、借入金などの財務状況を見ることに興味が湧いてきたんです。

[岡本君が注目したポイント]

  • 決算情報:企業の業績に連動する株価の予測に活用する
  • 営業利益の推移:その企業が本業で利益を出しているか、その推移を見る
  • 借入金:外部から調達した資本をチェックし、経営の安定性を見る

こんなビジネスモデルもあるんだ。この会社はこんな事業展開もしているんだ……さまざまな知識を吸収できたのは、今後の投資に生かされそうな気がします。

自分なりにここまで考えた末、メールで増井先生に「この2つの銘柄をどう思うか」という相談をし、アドバイスをもらいました。

【増井先生のワンポイントアドバイス】

IRから情報をきっちり拾っているのはすばらしいです!さらに言うなら、IRでオープンになっている指標の観点を持てると理想的ですね。

「北の達人」、「力の源」の信用倍率(※1)は高水準になっているので少々気をつけて見たいところですね。信用取引(※2)で大量に買われているため、将来は反対売買(※3)、すなわち売りが大量に入ることになりますし。6/21時点で、「北の達人」は1,412.00倍、「力の源」は6.91倍です(4/14時点ではそれぞれ295.20倍、120.44倍です)。

※1 信用倍率:信用取引で使われる用語。「信用買い」と「信用売り」のバランスを数値で表したもので、「信用買い残÷信用売り残」の公式で計算される。信用買い残・売り残は、いずれも信用取引の残高のことを表し、買い方の残高を「買い残」、売り方の残高を「売り残」と言う。買い残が売り残よりも多い、つまり信用倍率が1よりも大きい場合は将来の売りの要因となり、株価下落の可能性がある。一方、売り残が買い残より増える、つまり倍率が1倍に近い、または1倍以下の場合は将来の買いの要因になり、株価上昇の可能性がある。
※2 信用取引:投資家が一定の保証金(委託保証金)を担保として証券会社に預けることで、保証金の数倍の金額まで株式取引ができる制度。
※3 反対売買:信用取引で使われる用語。信用取引においては、買った銘柄・売った銘柄は定められた期日までに必ず決済しなければならない。その場合、買った銘柄を売る・売った銘柄を買うことを反対売買という。

■注目点や選び方のポイントは?

〜悩んだ末に決定!ついに銘柄を決めました〜

増井さんのアドバイスを踏まえて、最終的に「北の達人コーポレーション」を100株購入しました。「調子がいいから、あまり考えずに早く買っちゃった方がいいかも」と助言をいただいたんですが、ここにきて口座開設のタイムロスが響いたかな……。

確かに、こちらは上場したばかりで、文字通りの注目株。新卒採用のリクルートサイトを見ても、従業員数が約70人でこれだけの営業利益を上げているのは驚きです。あと、僕は仕事でWebマーケティングを担当していたので、マーケティングの面から見ても優良でした。アフィリエイトサイトでも競合が少なく、いい枠を確保できています。

Webで得た情報、増井さんのアドバイス、そして僕独自のリサーチでも穴がなく、ポジティブな要素がたくさんあるのが決め手になったと言えるでしょう。

【増井先生のワンポイントアドバイス】

「北の達人コーポレーション」はおもしろい株だと思いますよ。2017年2月の決算で営業利益率が20.1%と製薬会社並みの高さ。つい最近までなかった長期借入金が2億円になっていますが、好財務に変わりはありません。

ビジネス展開も要注目!インバウンド、ドラッグストア販売、eコマース、LINEを活用した広告手法など、今の時代を捉えていて有望だと思います。独立役員を設置するなど、コーポレート・ガバナンス(企業統治)への意識も高い。こちらは外国人投資家が大いに重視するポイントですよ。

売買代金は少ない時も1億円以上あり、そこそこ流動性がある――つまり、売りたい時にはすぐに売れる可能性が高い、ということです。こちらもビギナーの岡本さんには安心材料になるのでは?

■ライフスタイルにあわせた投資方法を

〜ようやく選んだ銘柄を、これからどうする?〜

ようやく絞り込んだ「北の達人コーポレーション」ですが、いったんは100株の購入。しばらくは動向を見ていきたいと思っています。

というのも、これは株式投資をはじめてみて思ったことですが、思ったほど投資に割ける時間がないんですね。たいていのサラリーマン投資家がそうだと思いますが、時間を取れるのはマーケットがクローズの時間帯。週末に集中的にリサーチをして、コツコツ進めていくしかありません。今のワークスタイルに合った投資スタイル、適切な目標設定を模索していく予定です。

僕としては、株式投資をギャンブルにするつもりはありません。仮説を立てて売買をして、その後に検証、振り返りができなければやっていく意味がない。もちろん、儲けを出すのも大切なことなんですが、長いスパンで投資を考える上では、しっかりと仮説をフィードバックしていく仕組みをつくりたいですね。

そして、銘柄を購入した今でもピンときていないのが、株価の値動きです。あまり知識がない企業の今後を予測する上では調べなきゃいけないことが多すぎます。僕が昔やっていたFXなら「雇用統計」「消費者物価指数」など、押さえるべき指標、情報がまとまっていたんですが、株式はそうはいかない。業界、企業情報を一気通貫して情報収集、比較検討できるメディアがあればいいのですが、なかなかフィットするものは見つかりませんし……。

とはいえ、今回の購入で万が一のことがあっても、800円×100株=8万円。最大の損失額が決まっている分、大きなリスクを抱えている感覚はありません。資金的にもまだ余力はあるので、余裕があれば値動きしそうな株をもう1つ買ってみようかと。増井さんの指南のもと、今回の経験をベースにして、またコツコツ勉強していきたいと思います。

【増井先生のワンポイントアドバイス】

株価の動きについてはまだまだ考えどころが多いようですね。前回も強調しましたけど、株式は経験を積めば積むほど勘所が分かってくるもの。岡本君はしっかり業界研究、企業研究ができているので期待大だと思います。この調子でがんばってくださいね!

悪戦苦闘の口座開設、迷走の銘柄選び、ドキドキの購入を経験した岡本君。今後はどのような運用をしていくのでしょうか? 今後もリアルな株式投資入門を引き続きレポートしていきます!

■訂正■
7月31日公開時に「北の達人コーポレーション < 3561 >、力の源ホールディングス < 2930 >」と記載しておりましたが、正しくは「北の達人コーポレーション < 2930 >、力の源ホールディングス < 3561 >」の誤りであったため、修正いたしました。
(2017年8月1日:編集部)

TEXT:マネチエ編集部
PHOTO:森口新太郎

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