学ぶ 2018.02.22 健康保険、社会保険、各種届出はどうなるの? 会社を退職する前に確認したいポイント

春は就職だけでなく転職、結婚や子育て、資格取得に取り組むためなどの理由で、退職をする人が増える時期です。会社を退職するにあたり、健康保険、雇用保険、年金、税金関係、住民税など、手続きが多々あります。そこで、退職後の暮らしをスムーズに送るために、退職する前に確認するべきポイントを考えましょう。

■退職時に会社に返却するもの・会社から受け取るもの

退職するときには、さまざまな手続きが必要になります。例えば、健康保険証は会社に返却するので退職後は使えません。また、転職先が決まっていない場合は、雇用保険から求職者給付(失業手当)の受給手続きを行います。同様に、年金や税金関係も所定の手続きが必要です。

このような手続きをスムーズに行うため、まずは退職時に会社から必要な書類をきちんと受け取るようにしましょう。

会社に返却するもの

  • 会社支給の貸与品(会社の社員証やカードキー、ロッカーキー、会社の社章、房具や制服など)
  • 通勤定期券(ICカードの場合、日割り清算して返却)
  • 名刺(自分の分だけではなく、取引先関係もすべて返却)
  • 健康保険証(扶養家族がいる場合、すべて返却)

会社から受け取るもの

  • 年金手帳
  • 雇用保険被保険者証
  • 源泉徴収票(後日郵送される場合が多い)
  • 離職票(転職が決まっていない場合)
  • 退職証明書(必要な場合)
  • 在籍期間証明書(必要な場合)
  • 年金資格喪失証明書(必要な場合)

■転職が決まっている人が必要な手続き

転職先が決まっている場合は、必要な書類をそろえて新しい会社に提出すれば、基本的には会社が手続きを進めてくれます。手続きの方法は会社によって異なりますので、担当者に確認しながら進めます。一般的に、転職にあたって必要になる手続きは下記のとおりです。

 対応方法
雇用保険入社後すぐに雇用保険被保険者証を新しい勤務先に提出
健康保険新しい勤務先の健康保険制度に加入
年金保険入社後すぐに年金手帳を新しい勤務先に提出し、年金保険制度に加入する
住民税前の勤務先に連絡し、特別徴収の手続きを依頼。手続き後に現職の勤務先に必要書類を添付してくれる。手続きには2カ月ほどかかる場合もあるので、実際に住民税が給与から天引きされるまでには時間がかかる
確定申告年末調整の手続きのため、前の勤務先の源泉徴収票を提出する。退職金支給時に退職所得の受給に関する申告を行う

忘れがちになるのは住民税です。前の勤務先に「住民税を次の勤務先で給与天引きをするので特別徴収の手続きをしてほしい」と必ず依頼をしてください。まれに特別徴収の手続きの依頼を忘れてしまい、住民税を領収書(普通徴収)支払いしている人も見受けられます。

■退職後の転職先が決まっていない場合の手続き

新しい勤務先が決まっていなければ、各種手続きを自分で行わなければなりません。具体的には下記の手続きが必要です。

対応方法

(1)健康保険

健康保険は、前の勤務先の健康保険を任意継続する、国民健康保険への切り替え、扶養家族として配偶者が加入している健康保険に登録するかのいずれかになります。手続きは、市区町村の役所・役場か、社会保険事務所で行います。

ちなみに健康保険の任意継続は、退職の前日までに継続して2カ月以上勤務していると、退職後2年間は継続できます。任意継続するためには、退職後20日以内に「任意継続被保険者資格取得申出書」を提出します。

健康保険の任意継続と国民健康保険のどちらを選んだほうが良いのかは人それぞれ異なります。世田谷区に住む33歳の人の退職例で考えてみましょう。(計算は平成29年度の内容をもとに算出)

【独身者の場合】

  • 健康保険の任意継続 1カ月32,368円 1年38万8,416円
  • 国民健康保険 1カ月22,469円 1年26万9,628円

【既婚者が退職した場合】

  • 扶養家族は、妻28歳(年収102万円、月収8万5,000円)
  • 健康保険の任意継続 1カ月32,368円 1年38万8,416円
  • 国民健康保険 1カ月26,198円 1年31万4,376円

【既婚者・子どもありが退職した場合】

  • 扶養家族は、妻28歳(年収102万円、月収8万5,000円)、子ども3歳、1歳(いずれも収入なし)
  • 健康保険の任意継続 1カ月32,368円 1年38万8,416円
  • 国民健康保険 1カ月33,098円 1年39万7,176円

扶養家族がいるかいないかによって、任意継続と国民健康保険は違ってきます。任意継続は上限が標準月額28万円と決まっています。そのため、扶養家族が多いほど一人あたりの負担が少なくなります。

一方で、国民健康保険は扶養家族が増えるほど自己負担が大きくなります。上記の場合では、独身や扶養家族が妻だけの場合は国民健康保険の方が安くなりますが、既婚者・子どもがいる場合は任意継続の方が負担をおさえられます。それぞれの家庭の事情によって、どちらを選んだらよいのかは異なるので、あらかじめ確認をしましょう。

(2)国民年金への加入

国民年金への加入申請を忘れないようにしましょう。扶養家族がいるときは戸籍謄本や同居していることが分かる書類(被保険者全員が同居していると分かる住民票等)が必要になる場合があります。退職時には自己都合、会社都合にかかわらず退職特例免除(失業等による保険料免除・納付猶予の申請)を受けられますが、将来受け取れる年金額が減るので注意が必要です。

(3)住民税、確定申告

住民税は退職時期によってその後の支払いが変わります。住民税が普通徴収になる時は住民税の支払いを忘れないようにしましょう。また、退職金が支払われたら、退職所得の受給に関する申告を行い、確定申告時に慌てないようにしてください。

■失業保険はどのように受け取るの?

転職先が見つからなければ、求職活動をしながら雇用保険の失業給付を受給できます。ただし、離職日以前の2年間に被保険者期間が通算12ヵ月以上あることなどの要件を満たさなければなりません。ハローワークへ離職票やマイナンバーカード、身元確認書類(免許証など)、印鑑、証明写真等を持って「求職の申し込み」を行いましょう。

待機期間の7日間が過ぎたら基本手当が支給されます。その後、4週間に1度、指定された日にハローワークに出向いて失業認定を受ければ、継続して基本手当を受給できます。なお、基本手当は支払われていた賃金を元に算出され、給付日数は働いていた年数や退職理由により異なる傾向があります。例えば、倒産・解雇など、再就職の準備をする余裕もなく退職した場合は、「特定受給資格者」となって、自己都合で退職した「一般受給資格者」より給付日数が長くなります。
(参考:受給要件

失業給付金の受け取り方

■退職後のポイントを押さえてスムーズな手続きを

このように、退職時にはさまざまな手続きが必要です。その中には手続きの締め切りが定められているものもあります。転職、結婚、出産、介護などで退職を検討している人は、離職前に必要な書類を確認し、スムーズな手続きを行えるようにしましょう。

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