学ぶ 2018.07.06 スキルアップにも役立つ!? 特定支出控除を有効活用しよう
自営業の人は仕事上必要なスーツや本を買ったら、必要経費として年収から控除することができるのでその分だけ税金が安くなります。一方で会社員などの給与所得者にも「特定支出控除」という制度があります。2012年度に条件や控除の範囲が広がり、使いやすいものに改正されました。仕事に関わる支出が多いと感じている人はぜひ利用したい制度だと思いますので、今回は制度改正後の内容について確認しておきましょう。
■会社の看板ではなく、個人の能力が重要視される時代に
社会環境や勤める会社がいつどのような状態になっても生き抜いていけるよう、自分のスキルを磨いておくことが重要視されはじめている現在。仕事に関する資格を取得し、できることをふやそうと考える人もいるのではないでしょうか。
資格を取得する場合、費用がさほどかからないものもあれば、予備校に通ったり、さまざまなテキストを購入して勉学に励む人もいるでしょう。そういった仕事に関する資格取得は、実は控除の対象になります。そのときに活用したいのが特定支出控除という制度なのです。
会社員の特定支出控除とは、仕事に関係する特定の支払いをして、その支払額が給与所得控除の金額を超えた場合に適用できます。超えた部分の金額について所得金額から差し引くことができる制度となっています。
以前は給与所得控除額の総額を超えた金額とされていましたが、平成25年分から給与所得金額の二分の一に緩和され、また対象範囲も広がってより活用しやすくなりました。
■特定支出控除の範囲って?
2013年の改正前までは、下記が特定支出控除の範囲でした。
1. 通勤費:通勤のための支出
2. 転居費:転勤に伴う転居のための支出
3. 研修費:仕事に直接必要な技術や知識の習得を目的とした、研修のための支出
4. 資格取得費:仕事に直接必要な資格を取得するための支出
5. 帰宅旅費:単身赴任などの場合で、勤務地と自宅との間の旅行のための支出
改正後、会社員がスキルアップするのを支援したり、仕事で使用するスーツ、交際費なども加わり、国としてもビジネスに関するフォローをしてくれるようになったといえます。なお、追加された内容は下記になります。
6. 図書費:書籍、定期刊行物その他の図書で仕事に関係するものを購入する費用
7. 衣服費:勤務先において着用する事が必要とされる被服を購入するための支出(スーツ代、アパレル関係で自社ブランドの服を購入する費用などもここに含まれます)
8. 交際費:仕事上関係のあるものに対する接待等に類する行為のための支出
いずれも会社が負担する金額を超えて自己負担したものが対象になります。なお、上記の図書費、衣服費、交際費に関する申請には勤務先の証明書が必要になり、65万円までの金額が対象です。
■特定支出控除ってどうやって計算するの?
年収500万円の場合、給与所得控除額は、下記のように計算されます。(参考:国税庁HP)
500万円×20%+54万円=154万円
この金額の半分、つまり年間で特定の支出が77万円を超えれば特定支出控除が使えます。年間に特定の支出が100万円あった場合、23万円が特定支出控除の対象になります。
たとえば、転勤して家族と一緒に過ごせない人が毎週末ごとに家族に会うための帰宅旅費が年間で30万円かかるとします。加えて、スーツ代に30万円、資格取得費に20万2,700円かかり、合計で80万2,700円の支出があった場合は3万2,700円が控除の対象になるということがわかります。
■特定支出控除を受けるためには確定申告必須
それでは、特定支出控除を受けるためにはどのような手続きをしたらよいかを説明します。控除を受けるには、確定申告が必要になります。まずは、確定申告をすることを前提に、確定申告に必要となる明細書、領収書、会社からの証明書、給与所得の源泉徴収票などを破棄せずに手元で保管しましょう。
給与所得者の人の多くは、源泉徴収をして年末調整を行えば納税が完了してしまうので、確定申告にはあまり馴染みがないかもしれません。しかし、自分の身近な項目が実は特定支出控除に該当する可能性もあるのです。自分には関係ないと思わずに、身の周りのものが該当しないかどうかを確認する習慣をつけるとよいかもしれませんね。
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TEXT:マネチエ編集部
PHOTO:liza54500/Shutterstock.com
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