学ぶ 2018.08.29 別居している親を扶養に入れるのはメリットがある?ない?

「親を扶養に入れると節税対策になる」とよく言われますが、本当なのでしょうか。事実、仕送りなどで生計をともにしていれば、別居している親でも扶養に入れることは可能です。 扶養に入れることで所得税や住民税の節税効果が出る場合もありますが、デメリットが生じるケースもあるので注意が必要です。ここでは、別居している親を扶養に入れるメリットとデメリットを紹介します。

■扶養とは

そもそも扶養とは、経済的に自立していない親族の生活を援助することを指します。配偶者以外には、6親等内の血族(直系親族の兄弟姉妹、もしくはその子など)や3親等内の姻族(血族の配偶者やその親族)が扶養親族になるので、親も扶養に入れることができます。

一言で扶養と言っても、「税金(所得税・住民税)の扶養」と「社会保険(健康保険)の扶養」という2種類が存在し、税金の扱いが異なります。

●税制面の扶養

税金面の扶養に入れるためには、以下の条件を満たさなければなりません。

  • 親の年間所得合計が38万円以下であること
  • 生計をともにしていること

扶養は、経済的に自立して生活していない人を援助するためにあるため、親には所得の上限が定められます。また、生活費などを援助していることが「生活をともにしている」(法律用語では「生活を一にしている」)ことを意味しています。別居していても問題ありませんが、資金援助している額が少ないと対象外となります。

●社会保険上の扶養

社会保険上での扶養に入れる場合の条件は、以下の通りです。

  • 年間収入が130万円未満(60歳以上または障害者であれば180万円未満)
  • 別居している親の収入が扶養者からの仕送り額未満
  • 同居している親の収入が扶養者の収入の半分未満

■親を扶養に入れる場合のメリット

親を扶養に入れる最大のメリットは、税金が減税される扶養控除が受けられることです。これによって、所得税と住民税を節税することができます。国税庁が発表している控除額は以下の通りです。

<所得税控除>

  • 一般の控除対象扶養親族(親が70歳未満):38万円
  • 同居する老人扶養親族(親が70歳以上):58万円
  • 別居する老人扶養親族(親が70歳以上):48万円

<住民税控除>

  • 一般の控除対象扶養親族(親が70歳未満):33万円
  • 別居している老人扶養親族(親が70歳以上):38万円
  • 同居している老人扶養親族(親が70歳以上):45万円

この金額に対して、所得税の税率(5~45%)と住民税率(10%)を掛け合わせた金額と復興特別所得税(2.1%)を全て合計した金額が実際の節税額となります。では、親と別居している所得税の税率が20%の人と5%の人をシミュレーションした場合、具体的にどれだけ節税できるのかを計算してみましょう。

<所得税の税率5%で、70歳以上で別居している親を扶養に入れた場合>

  • 所得税:48万円×20%=9万6,000円
  • 住民税:38万円×10%=3万8,000円
  • 復興特別所得税(※):96,000円(所得税)×2.1%=約2,000円
  • 約13万6,000円控除

<所得税の税率20%で、70歳以上で別居している親を扶養に入れた場合>

  • 所得税:48万円×5%=24,000円
  • 住民税:38万円×10%=3万8,000円
  • 復興特別所得税(※):24,000円(所得税)×2.1%=約500円
  • 合計:約6万2,500円の控除

(※復興特別所得税:平成49年12月31日までの間は、所得税に加算される復興特別所得税の税率(2.1%)を扶養控除に含める計算となります)

年間これだけの税金を節約できれば、メリットは大きいと言えるでしょう。すでに親の生活費を援助しているのに扶養家族になっていない場合は、扶養にすることを考えてもよいでしょう。また、親にとっても、扶養に入ることで健康保険料がかからなくなるというメリットもあります。

■親を扶養に入れる場合のデメリット

親を扶養に入れることによる節税効果は大きいですが、次の条件に当てはまる場合はデメリットが生じてしまいます。

まず、親が75歳以上である場合は、後期高齢者医療制度に移行し、子の健康保険とは別の扱いになります。親の健康保険料や医療費控除については、扶養の効果が出なくなるのです。ただし、所得税や住民税の控除は引き続き受けることが可能です。

次に、75歳未満でも親の医療費の自己負担額が増加してしまうケースはあります。70歳以上の被保険者で診療月の標準報酬月額が28万円以上の人と、その被扶養者で70歳以上の人は現役並みの所得があると見なされるため、親の自己負担額も3割まで引き上げられてしまいます。また、親が頻繁に病院に通っていると医療費がかさみ、節税分以上にマイナスとなってしまう可能性があるので注意しましょう。

■親を扶養に入れると節税対策になる!

親を扶養に入れると、所得税や住民税が控除され、節税につながります。ただし、親の所得が38万円以下で、生活費などを継続的に援助していることが条件です。すでに親に仕送りしている場合は、扶養に入れれば大きな節税となるでしょう。メリット・デメリットを踏まえて親とも話し合い、節税に向けた方策を検討しましょう。

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