学ぶ 2019.03.29 人気ブロガーも選択した「事実婚」をお金の観点から検証してみる

人気ブロガーのはあちゅうさんが選択したこともあり、「事実婚」が話題になりました。事実婚を選ぶことで、夫婦のいずれかが姓を改める必要がないメリットもありますが、税金や相続などの面では法律婚と比べてデメリットもあります。事実婚をお金などの観点から検証してみましょう。

■事実婚とはどんな仕組みなの?メリットは?

「事実婚」は「法律婚」とは異なり、本人たちの意思で婚姻届を出さずに、事実上の夫婦生活を営んでいる形態のことです。婚姻届を出さずに事実上の夫婦生活を営んでいるという点では「内縁関係」と共通点があります。

内縁関係は事情があって婚姻届を出さない場合を指すのに対し、事実婚は本人たちが積極的に婚姻届を出さない選択をしたときにそう呼ばれます。

「法律婚」を選ぶと夫婦別姓(別氏)にはできませんが、事実婚の場合はこうしたルールにしばられることはありません。夫婦生活をスタートさせても姓を変えずにいられるため、保険や年金、運転免許、パスポートなどの変更手続きも必要なく、職場でも今まで通りの姓を使うことができます。

こうした点のほか、別れても戸籍に影響がないことなどをメリットと考えて事実婚を選ぶカップルもいます。日本の戸籍制度に反対して婚姻届をあえて出さない人たちもいるようです。

■税金や相続などにおける「法律婚」との違い

事実婚にはメリットもありますが、法律婚とは税金や相続などの面で扱われ方が異なります。例えば、法律婚の場合には、配偶者の年間所得が一定以下の場合などに「配偶者控除」や「配偶者特別控除」の適用を受けることができます。

こうした控除制度の適用を受けると納税負担が減ることにつながりますが、事実婚ではこれらの控除制度が適用されることはありません。また事実婚では、パートナーが死亡したあと相続権が発生しません。

相続人の範囲は民法で「死亡した人の子供」「死亡した人の直系尊属(父母や祖父母など)」「死亡した人の兄弟姉妹」と定められており、事実婚のパートナーはこれに含まれておりません。

故人が遺言書を作成していた場合には遺産を相続することは可能ですが、法律婚の場合よりも相続税額が2割も加算されてしまうというデメリットがあります。

■事実婚の注意点や講じておきたい対策は?

事実婚は日本ではまだまだ社会的な認知度も高くなく、事実婚を選択したカップルに理解を示してくれる人多いとは決して言えません。

両家の親族についても同じことが言えるでしょう。事実婚であっても法律婚と同じように、夫婦生活をずっと営んでいく中では両家の家族との関係が良好であることに越したことはありません。そのため、事実婚を選んだ理由などを両親などに丁寧に説明し、徐々に理解を得られるような努力は求められそうです。

遺言書については、事実婚の場合は特に早めにパートナー同士で相談し、法的効力がある方式で早めに作成しておいたほうがよいでしょう。遺言の方式としては、最も確実な遺言方式と呼ばれる「公正証書遺言」や遺言者本人が作成する「自筆証書遺言」などがあります。

■住民票の手続きをしておくと便利

事実婚では婚姻届はそもそも自治体に提出しませんが、住民票の手続きによって住民票に記載される世帯主との続柄を「夫(未届)」または「妻(未届)」としておくことができます。

これまで説明したように、事実婚では「配偶者控除」などの適用を受けることはできませんが、健康保険制度では事実婚でも法律婚の場合と同様の保障を受けることができるほか、最近では事実婚でも家族手当を支給する会社が増えており、事実婚を証明する書類として住民票を利用することができます。

ただ自治体によっては「未届」と記載する手続きについてまだ先例がなく、受理に手間や時間を多く要することも現時点ではあるようです。

■今後ますます社会の受け止め方が問われる

事実婚は、ヨーロッパでは2000年ごろには既に増加傾向が顕著になっています。日本に比べて婚外子の割合が非常に高くなっていることからも分かります。日本でも事実婚の認知度が高まるにつれ、法律婚を選ばないカップルが今後増えていく可能性があります。

最近では、事実婚のカップルを自治体が公式に認証する制度を千葉市が全国で初めて導入し、話題になりました。結婚に関する人々の考え方の変化とともに、社会の受け入れ方や税金に関する制度のあり方も今後問われることになるでしょう。

TEXT:マネチエ編集部
PHOTO:PIXTA

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