学ぶ 2019.04.12 同じ商品なのに値段が変わる「ダイナミックプライシング」って何?

宿泊予約や航空券では以前から一般的だったダイナミックプライシング(変動料金制)が、最近ではスポーツ業界でも導入され始めました。AI(人工知能)が価格を決めるシステムも登場し、将来はより導入が広がると言われています。

■ダイナミックプライシングとはどんな仕組み?メリットは?

ダイナミックプライシングとは、一般的には需要と供給の状況に合わせて価格を変動させる仕組みのことです。需要が多いときは価格を上げ、需要が少ないときは価格を下げるというものです。

商売を営む側からすると、需要が高い時期は値上げによってより多くの売り上げを達成することができ、需要が低い時期は値下げによって在庫をさばき、一定の売上確保につながります。

■Jリーグの試合でも導入、AIを使った自動料金設定システムも

実はこのダイナミックプライシングは、今までも私たちの身近な場所で導入されてきました。スーパーでは売れ筋ではない商品を値下げすることがあります。需要が少ない商品を値下げするのは、まさにダイナミックプライシングの仕組みそのものです。

居酒屋などが「ハッピーアワー」のような形で夕方などにドリンクを値引きするのも、ダイナミックプライシングの一例と言えるでしょう。こうした仕組みは随分前からありましたが、近年になってダイナミックプライシングが注目されている理由としては、AIや独自アルゴリズムなどを導入し、価格設定の一層の最適化や自動化ができるようになったことが挙げられます。

航空業界や宿泊業界では早くからこうした技術を活用した先進的な自動変動システムを導入してきました。最近ではJリーグの試合でもダイナミックプライシングが導入され、新幹線の料金にも導入しようという動きもあります。

■ダイナミックプライシングには意外な落とし穴も?

最近はさまざまなソフトウェア開発企業などがAIを活用したダイナミックプライシングのシステムを作り、そのシステムを導入する企業も増えてきました。ただダイナミックプライシングには落とし穴もあります。導入が進んでいる宿泊業界を例に考えてみましょう。

ホテル側が注意すべきなのは、需要の変動に関係がある要素をシステム側が把握できず、値上げのしすぎや値下げのしすぎが想定外に起きてしまう可能性があることです。

例えば毎年ホテルの近くで開催される人気イベントを考慮し、システム側が開催期間前後の宿泊料金をあらかじめ自動値上げしたものの、そのイベントが中止されることになったことをシステム側が把握できず、宿泊料金を値上げしたままだとどうなるでしょうか。そのホテルはその期間、きっと予約はガラガラになってしまうでしょう。

■国や民間がタクシー料金や駐車場料金で盛んに導入実験

ダイナミックプライシングについては、特に現在は交通分野で国や民間によるさまざまな導入実験が行われています。例えば2018年10月から11月にかけ、タクシーの迎車料金にダイナミックプライシングを導入するという実証実験が国土交通省の主導で行われました。2018年は駐車場料金にダイナミックプライシングを導入するという民間企業による試みも行われ、話題を呼びました。

■仕組みを知れば同じ商品を安く買えることも……上手に付き合おう

同じ商品でも値段が違うダイナミックプライシングが広く浸透することは、一昔前までは想像しにくかったことかもしれません。しかし今後、価格の最適化に向けた技術もより向上し、よりさまざまな商品に導入されていくことでしょう。

ダイナミックプライシングの仕組みを知れば、タイミングを選んで同じ商品をより安く買うこともできます。この新たな仕組みを知り、賢く買い物ができるようになりましょう。

TEXT:マネチエ編集部
PHOTO:PIXTA

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