学ぶ 2019.04.15 世帯年収800万円の夫婦の生活 共働きか妻が専業主婦かでこんなに違う?
夫婦共働き世帯と、夫か妻のいずれかだけが働く世帯。同じ世帯年収だった場合、家計に違いは生まれるのでしょうか。年収800万円の世帯を例に、それぞれの家計にどのような差があるのか考察していきます。
■妻が専業主婦のAさん夫婦と共働きのBさん夫婦 所得税の違い
妻が専業主婦のAさん夫妻と、共働きのBさん夫妻について見て行きましょう。両夫妻とも年収は同じ800万円ですが、Aさん(妻)は専業主婦、Bさん(妻)は契約社員として働いています。
Aさん夫妻 | Bさん夫妻 | |
世帯年収 | 800万円 | 800万円 |
夫の年収 | 800万円 | 520万円 |
妻の年収 | 0円 | 280万円 |
所得税は、年収から様々な「控除」を差し引いた「課税所得」に税率をかけて出します。会社員が税額を計算する際に必ず差し引くのが給与所得控除、社会保険料控除、基礎控除です。給与所得控除は会社員にとっての経費のようなものと考えればよいでしょう。その額は年収(給与収入)に応じて決まります。
収入額:給与所得控除額
162万5,000円まで:65万円
162万5,000円超180万円まで:収入金額×40%
180万円超360万円まで:収入金額×30%+18万円
360万円超660万円まで:収入金額×20%+54万円
660万円超1,000万円まで:収入金額×10%+120万円
1,000万円超:220万円
両夫婦の給与所得控除を比較すると以下のようになります。
Aさん(夫)は年収660万円超1000万円までのため「収入金額×10%+120万円」に当てはまります。
800万円×10%+120万円=200万円
Bさんはどうでしょうか。Bさん(夫)は180万円超360万円までのため「収入金額×30%+18万円」、Bさん(妻)は360万円超660万円以下なので「収入金額×20%+54万円」を当てはめます。
Bさん(夫)
520万円×20%+54万円=158万円
Bさん(妻)
280万×30%+18万円=102万円
夫婦別でみるとこのようになります。
Aさん夫婦……200万円
Bさん夫婦……260万円(158万+102万)
世帯年収は同じですが、給与所得控除額は共働きのBさん夫婦が60万円も多くなります。控除額が大きいと「課税所得」がその分少なくなるので、所得税は低くなります。
社会保険料控除は一般的に年収の14.22%で計算されるので、Aさん113万7,600円、Bさん(夫)73万9,440円、Bさん(妻)39万8,160円控除されるとします。これで所得税・復興特別所得税を計算してみると、Aさんは40万1,100円です。
Bさん夫婦は夫が15万5,700円、妻が5万1,100円で合計20万5,700円です(※Aさんのみ配偶者控除38万円を含む。両家とも生命保険料控除、地震保険料控除、医療費控除は考慮していません)。Aさん、Bさん夫婦で大きな差があることが分かります。
■住民税の比較
住民税についても確認していきましょう。東京都調布市の住民税(所得割・均等割)で計算してみました。Aさんは42万2,600円+均等割分5,000円=42万7,600円、Bさん(夫)は25万7,500円+均等割分5,000円=26万2,500円、Bさん(妻)は10万7,500円+均等割分5,000円=11万2,500円です。こちらでも5万円ほど共働きのBさん夫婦の負担が少ないということになります。
■家計の違い
Aさん夫妻 | Bさん夫妻 | |
世帯年収 | 800万円 | 800万円 |
所得税 | 40万1,100円 | 20万5,700円 |
住民税 | 42万7,600円 | 37万5,000円 |
合計 | 82万8,700円 | 58万700円 |
差額 | 24万8,000円 |
Aさん、Bさんの税金負担から見ると、Bさん夫婦のほうが少ないことが分かります。これは日本が累進課税制度を取っているためです。個人の所得が高くなるほど税金が高くなっていくため、年収が高いAさんの負担が高くなるのです。
専業主婦がいると社会保険料の負担が少なくなり、配偶者控除もあります。そのため専業主婦の家庭のほうが得をしているように見えますが、税負担を細かく確認してみると、共働きのほうが可処分所得は多くなります。
■住宅ローンの借入れ額の違い
人生の中での大きな買い物のうちの一つ「住宅購入」についても比較してみましょう。住宅購入をする際、住宅ローンを利用する人がほとんどです。専業主婦のいる家庭の場合は働く人(夫)の年収で借りられる金額が決まります。
例えばAさんがフラット35で借り入れる場合、800万円の年収だと7,681万円までの借り入れが可能です(※融資金利1.450%、返済期間35年、元利均等方式で計算)。共働きならばどうでしょうか。Bさん夫婦も借り入れようとしたら収入を合算できますので、7,681万円まで借り入れられます。
また「夫婦連生」にして、夫婦どちらかに万が一のことが起こった場合は債務を全額返済することもできます。ただし、夫婦連生には、住宅ローン手続きの手数料が2人分かかったり、住宅ローン金利が若干上乗せされるなどのデメリットもあります。
■現状を把握して働き方を決めよう
共働き家庭のほうが、税負担が少ないため可処分所得が多かったり、住宅ローンで夫婦連生が使えたり、有利なことが多いように思えます。しかし、どちらが絶対に良いとは言えません。
例えば共働き夫婦では家計を別々に管理していて、相手の収支をまったく把握していないという場合も珍しくありません。また共働きで可処分所得が多いと、知らず知らずのうちに贅沢をしがちです。
その点、専業主婦家庭の場合は家計を一元管理できるというメリットがあります。家庭の事情もあるため、妻に専業主婦でいてもらう、もしくは共働きをするというのは簡単に変えられるものではないでしょう。しかし、年収141万円までしか受けられなかった配偶者特別控除が2018年からは年収150万円までならば上限いっぱいの38万円分受けられるようになりました。
また、フリーランスやテレワークなど、働き方の選択肢も広がり、就職しなくても働ける環境もできつつあります。夫婦の働き方について、一度考えてみてはいかがでしょうか。
TEXT:マネチエ編集部
PHOTO:PIXTA
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