備える 2016.09.05 資産1億円あっても老後に不安? 老後資金は◯◯で用意すると安心

こんな話を聞いたことがあります。それは、資産1億円を有している75歳のおばあさんが、老後資金のことで悩んでいるというものでした。相続の問題かな?と思ったのですが、違いました。何と、自分の老後資金が足りるか心配だというのです。びっくりです。資産が1億円もあるのに?

■預金残高が毎月減っていくという「不安」

そのおばあさんは、特に贅沢な暮らしをしているわけではありません。でも、毎年資産を取り崩していることが、不安だというのです。

計算をしてみましょう。現在75歳で、105歳まで生きるとしたら、30年間あります。1億円を30年で割ると1年間で約300万円(1億円÷30年=年間333万円)取り崩しても大丈夫な計算です。それに年金100万円が上乗せされるので、年間約400万円で暮らせることになります。通常で考えるとかなり余裕のある生活ができるはずです。

しかし、預金の残高がどんどん減っていくのは、不安なのでしょうか。計算上は、ほぼお金に困ることはないと分かっていても、自分が何歳まで生きるのかは誰にも分かりません。ですから生きているうちに何かあると困ると考えるのでしょう。何かあったときに、お金に困らないだろうか?と不安がつきまとうわけです。

■老後資金の準備の仕方が間違っていた?

それでは一体老後資金は、いくらあれば大丈夫なのでしょうか。この手の話は、書籍やマネー雑誌などでもよく見かけますよね。実際筆者自身も何度も書いてきました。

その多くは、統計に見られる平均的な生活をモデルに、平均寿命をもとに算出しています。根拠に基づいた数字ではありますが、それでもあくまでも「平均的な机上の数字」であることも確かです。筆者も老後資金の一定の目安として書いてきました。あくまでも目安ですが、最低3,000万円は必要でしょう。しかし、その目安の数字よりはるかに資産を持っていても、不安を感じている人がいます。逆に資産が少なくても不安を感じていない人もいるのです。

なぜ、そのような違いがでるのでしょうか?

■老後資金は、ストックではなくフローで用意する

答えはフローがあるかどうかの違いです。老後になっても、フロー(毎月一定額のお金)が入ってくるというのは、安心できます。ストック(資産)の減りが少なくてすむからです。

ストックがあってもフローが少ないと、ストックの減りが多く感じられて、不安になります。ですから老後資金で重要なのは、毎月一定額のお金が入ってくるということです。資産の減りが少なくなることで「不安が軽減する」と考えて良いでしょう。

たとえ資産1,000万円の人でも、毎年300万円ずつ入ってくるのであれば安心感が増します。実際は、資産1億円を持っている人の方がずっと安心なはずなのですが、人間の心理とは不思議なものです。

では、資産1億円持っていても心配な人はどうすれば良いのでしょうか?一つの考え方として、ストックをフローに変える方法があります。たとえば、毎月配分型の投資信託を購入するのも良いでしょう。安心できる運用に切り替えることでお金の心配が軽減します。

■長生きに対応した老後資金を用意する

もう一つ、問題になるのが「年金の受け取り方法」です。

「国民基礎年金」、「厚生年金」は終身で受け取けることが決まっています。

しかし、「個人年金保険」は、(1)一時金、(2)確定年金、(3)終身年金など受け取り方法を選ぶことができます。
確定拠出年金」も(1)一時金、(2)確定年金、(3)一時金と年金の併用、(4)終身年金(一部の商品)から受け取り方法を選ぶことができます。
また、「国民年金基金」も、申込時に受け取り方法を選ぶことができます。

どれを選ぶか、実に悩ましく、複雑な問題です。というのは、税金のことがあるからです。どれが有利なのかは、その人の収入などで変わるので一概には言えません。

もう一つ、「いつまで生きることができるのか」でも変化します。何歳まで生きるかは、亡くなるまで分かりませんが……。

長生きされた場合、終身で受け取れるタイプがお得です。早くに亡くなられた場合、一時金または確定年金がお得です。税金のことを別にすれば、どちらがお得かというのは、まさに賭けです。

■2060年には、平均寿命が4歳延びている

ちなみに、私は長生きする方に賭けています。つまり、早死にをすると賭けに負けます。長生きをすると賭けに勝ちます。

そういった視点で、老後資金を考えて見てはいかがでしょうか。毎年、平均寿命は延びています。2060年には、平均寿命が「男性84.19歳」「女性90.93歳」になる見通しです。ですから、これからの時代は、長生きのリスクに対応できるように考えておいた方が良いでしょう。

もちろん、ストックとして貯めるのも重要ですが、毎月入ってくるフローを準備しておくのも、長寿社会に対応した賢い方法ではないでしょうか。

TEXT:長尾義弘/ZUU Online
PHOTO:Thinkstock/Getty Images

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