備える 2017.03.23 生命保険の値上げの理由は「標準利率」の引き下げ?保険料が決まる3つの要素

生命保険や医療保険の「標準利率」が2017年4月に引き下げられます。金融庁が行うこの施策によって、保険料の額も変わってくるそう。「標準利率」とはどのような数字なのか、そもそも保険料はどのようにして決まるのか?影響が大きい保険のタイプを挙げながら解説していきましょう。

保険料を決定する3つの要素

保険会社はさまざまな指標、データを基に収支を計算し、各保険商品を設計しています。その基になるデータは一定のスパンで変更が行われるため、それに応じて商品の内容や保険料も見直されることがあります。前提となる要素は次の3つです。

  1. 標準利率
  2. 生保標準生命表
  3. 事業費率

これらの数値や数値に影響する要素が変動することで、保険料が変わることがあるんです。

1. 標準利率:貯蓄性の高い保険商品に注意?

「標準利率」とは、保険会社が保険金を支払う際の備え、「責任準備金」を貯める際の利回りのことです。

保険会社は、私たちが支払う保険料の一部を株式などに投資し、運用しています。その運用で見込める利回りが予定利率です。この予定利率は、契約者が支払った保険料を「どれだけ増やせるか」を示す利回りのことをいいます。利回りが高ければ保険料は安くなり、低ければ保険料は高くなります。

各保険会社が予定利率を決める際には、金融庁が定める標準利率が基準の指標になります。そのため、標準利率の改定が保険料の高低を左右してしまうというわけです。

標準利率は月払いの保険商品では毎年4月に改訂されますが、昨今進められているマイナス金利政策によって、国債の利回りが大幅に下がっています。これによって、保険会社が将来契約者に支払うために積み立てた責任準備金を保険業法の取り決めである「一定額以上」守ることが危うくなってきました。国債の金利は、2017年4月には1%から0.25%に引き下げられることが決まっています。これは、史上最低の水準です。

標準利率の改定が強く影響するのは、資産運用による貯蓄性が前提となる商品群。具体的には学資保険や個人年金保険、終身保険などです。この動きは既にはじまっており、日本生命は、2017年4月から学資保険や個人年金保険の契約者に対する利回りを1.35%から0.85%に、終身保険は1.15%から0.40%に引き下げると発表しました。他の生保各社もこれに追随すると見られています。

2. 生保標準生命表:長寿化も保険料に影響

保険料を決める3要素の2つ目が「生保標準生命表」です。これは年齢ごとの死亡率を日本アクチュアリー会が取りまとめたもの。保険業界の共通した基準になるデータとして保険商品に反映されます。この改定が2018~2020年に予定されており、標準利率の引き下げに続いて、保険料に大きく影響することになりそうです。

 値下げが予想される保険 終身保険や定期保険、収入保障保険など
 →掛け捨ての死亡保障商品
 値上げが予想される保険 医療保険やがん保険、介護保険など
 →生存給付型の商品

次の改定では、日本人の長寿命化(各年代の死亡率低下)がデータに落とし込まれると見られ、終身保険や定期保険、収入保障保険など、掛け捨ての死亡保障商品は、保険料が下がると予想されます。一方、長寿化による医療・介護リスクの増大から、医療保険やがん保険、介護保険など生存給付型の商品は値上げが見込まれています。

3. 事業費率:ネット保険の方が有利?

保険料を決める最後の要素は「事業費率」。保険会社が人件費、管理費、事務費などに充てる経費の割合のことです。

1の標準利率、2の生保標準生命表は保険業界全体を左右するファクターですが、3については各社それぞれで異なります。たとえば、ネット保険会社はこれらの経費が安く抑えられるため、保険料も安く設定されています。

保険選びはより慎重に

標準利率の引き下げ、生保標準生命表の改定をフックに、保険料は2017年からの数年間で大きく変動しそうです。マイナス金利政策が導入されて以降、各保険会社は貯蓄型保険を販売停止したり、保険料を値上げしたりと、その動きは既に2016年から始まっていました。

今後の保険料の上げ下げ、そのタイミングは保険会社ごとに異なります。自分が契約している保険会社、目をつけている保険商品について、さらなるチェック、熟考が必要になるでしょう。値上げが予測されるからといって駆け込みの契約は禁物です。ライフプランと自分の目的を見極め、じっくり検討したほうが良いでしょう。

TEXT:マネチエ編集部
PHOTO:PIXTA

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