備える 2018.01.05 大学進学のお金 「奨学金」と「学資ローン」はどちらが良いの?

1月にはセンター試験、2月・3月には国公立・私立大学の受験と、いよいよ本格的な受験シーズンが近づいてきました。苦しいときこそ、しっかりサポートしてあげたい反面、親の悩みの種となるのが、入学時や大学4年間の費用ではないでしょうか。そこで検討したいのが、教育費に特化したさまざまな支援制度です。今回は、「奨学金」と「学資ローン」を中心に、その違いや利用のポイントについて紹介します。

奨学金や学資ローンには、公的と民間の2種類がある

まずは、奨学金と学資ローンの違いについて簡単に比較してみましょう。

奨学金とは、経済的に進学が困難な学生に金銭的な支援をする制度です。いずれも子どもが大学を卒業してから返済が開始になります。返済するのは子どもです。「お金をそのままもらえる給付型」「後々返済義務の生じる貸与型」の2種類があります。

・給付型の奨学金

有名大手企業、特定業界関連の公益財団などで実施しています。ただし、成績優秀者であることや、特定業界への就職などの条件が含まれていることも。また大学でも、成績優秀者向けに給付型の奨学金が用意されている場合もあります。

2018年から日本学生支援機構でも返済不要の給付奨学金がスタートします。これは進学先や下宿の必要の有無に応じて月額2万円~4万円を給付する制度です。申し込みに際して住民税非課税世帯・生活保護世帯、児童養護施設等に入所している、または里親に養育されている生徒などの申込資格があります。これによって、教育を受けたい人が進学できる門戸がさらに広がります。

・貸与型の奨学金

日本学生支援機構のほか、都道府県などの自治体や民間の育英団体、大学などで用意されています。大学独自の奨学金は各大学でプランもさまざまです。

・学資ローン

学資ローンは政府系の金融機関が取り扱う「公的ローン」と、金融機関や信販会社の「民間ローン」に分けられます。公的ローンよりも民間ローンの方が借入れ利率は高い傾向にあります。

・日本学生支援機構の貸与型奨学金は月額支給

奨学金制度を利用しようとすれば、最初に候補に上がるのが日本学生支援機構の貸与型奨学金でしょう。「一括ではなく毎月定額が支給される」「無利息の部分がある」「返済期間が長い」などの特徴があります。高校時代にあらかじめ申請をしておくこともできます。

なお、日本学生支援機構の奨学金は、大学入学後から支払われます。そのため、入学費用や前期の授業料に充当することは出来ません。奨学金を利用したいと考える場合は、入学費用と前期の授業料分はあらかじめ貯めておく必要があります。

・学資ローンは日本政策金融公庫の「教育一般貸付」を

学資ローンも、公的機関をはじめ、民間銀行、信販会社など多くの金融機関で実施されています。なかでも公的機関の学資ローンの代表格が、日本政策金融公庫の「教育一般貸付」です。返済は借入れをした翌月から始まりますが、返済するのは親です。

「教育一般貸付」を受けるには、子どもの数と世帯年収に上限が定められています。

世帯年収(所得)の上限額
子どもの数(人)世帯年収(所得)の上限額備考
1790万円(590万円)子どもが2人以内の場合、要件に該当する場合、990万円(770万円)まで上限額が緩和される
2890万円(680万円)
3990万円(770万円) 
41,090万円(870万円) 
51,190万円(970万円) 

日本政策金融公庫HPより引用)

公的な「奨学金」と「学資ローン」を表で比較

今回は公的な機関が実施している「奨学金」と「学資ローン」で比較をしてみます。いずれも低い利率、長い返済期間など利用者にとって有利な面が多いローンといえます。どちらも入学や学費のための教育支援資金という点では同じでも、借りる人や条件、時期など内容が異なります。家庭の事情や借入れ金額によってどちらを選べばいいのか異なりますが、参考にしてください。

奨学金と教育一般貸付の比較表
 奨学金
(日本学生支援機構 貸与型)
教育一般貸付
(日本政策金融公庫)
借り主(返済主)学生本人保護者
融資額(月額)[第一種]
【国公立・自宅通学】
3万円または4万5,000円
【国公立・自宅外通学】
3万円または5万1,000円
※自宅通学の月額も選択できます。
【私立・自宅通学】
3万円または5万4,000円
【私立・自宅外通学】
3万円または6万4,000円
※自宅通学の月額も選択できます。
[第二種]
3万円、5万円、8万円、10万円または12万円
学生1人につき350万円以内 (子どもの数と世帯年収の上限が決まっている
使い道とくに定めはない (学生生活全般)・学校納付金 (入学金、授業料など)
・受験費用 (受験料、交通費・宿泊費など)
・アパート・マンションの敷金・家賃など
・教科書、教材、パソコン購入、通学費など
借入方法毎月定額振込一括振込
支給(融資)実行日入学月(採用月)から申し込みから20日程度
返済開始時期卒業後7カ月後から借りた翌日から
利息の発生時期在学期間中は発生しない借りた翌日から発生
利息第一種 無利息
第二種 3%を上限
年1.76%(固定金利) (2017年11月時点)
(低所得、母子父子家庭、交通遺児家庭は、0.4%利息優遇)
返済期間(最長)所得や貸与総額による15年以内 (低所得、母子父子家庭、交通遺児家庭は18年以内)
保証人両親もしくは4親等以内の親族、または保証機関連帯保証人、または(公財)教育資金融資保証基金による保証

(各種資料を参考に作成)

奨学金と学資ローン、どちらを選ぶのがよいのか

それでは奨学金と学資ローン、どちらを選ぶのがよいのかを考えてみます。

(1)奨学金を選ぶ方が良い場合

  • 成績がよいのに、家庭にお金がなく進学が困難
  • 低金利での借入れを希望
  • 返済は大学卒業後、子どもが自分で行う

(2)学資ローンを選ぶ方が良い場合

  • ある程度まとまったお金が必要
  • 早めに融資をしてほしい
  • 子どもに返済させずに、親である自分たちが返済する

350万円借入れをする時に奨学金と学資ローンでは返済金額や返済総額の金利に差が出ます。

 奨学金学資ローン
返済回数180回(15年0カ月)180回(15年0カ月)
金利0.43%1.76%
返済総額(金額)3,614,715円3,984,856円
返済総額(%)103.27%113.85%

(各種資料を参考に作成)

もちろん奨学金と学資ローンを併用することができます。その場合は奨学金と学資ローンの金利に注目し、奨学金と学資ローンの返済合計額がより少なくなるようにシミュレーションしましょう。

子どもの将来を考えて奨学金や学資ローンの計画を

子どもがまだ小さいのであれば、つみたてNISA(非課税累積投資契約に係る少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)、学資保険なども検討しましょう。そのためには、子どもの教育プランを考えると同時に家族みんなのライフプランもあわせて考えます。

そうすれば、毎月いくら貯蓄が必要なのかが分かります。早め早めに対処することで、学費が払えないかもしれないという悩みを解消することができるでしょう。

TEXT:マネチエ編集部
PHOTO:PIXTA

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