備える 2018.04.20 住宅ローンの頭金のありとなし、どっちが正解?
低金利時代の現在、住宅ローンの頭金を用意するメリットはどの程度あるのでしょうか?返済に際して頭金がある場合とない場合でのメリットを比較し、将来的に家計に及ぼす影響を考えてみましょう。
■住宅ローンの頭金とは?
住宅ローンの頭金とは、マイホームの購入時、住宅ローンの借入れをする前に自己資金の中から支払うことができるお金のことです。
頭金を支払うことで、住宅ローンの借入れ額を減らすことができ、その後の毎月の返済額を抑えることができます。また、頭金あり・なしによって、借入れ金利が変わる場合もあります。
頭金は、住宅の購入金額の〇%必要という決まりはありませんが、国土交通省の「平成28年度 住宅市場動向調査報告書」によると、平均で「注文住宅:1,142万円」、「分譲戸建住宅:828万円」、「分譲マンション:1,240万円」、「中古戸建住宅:979万円」、「中古マンション:1,047万円」の頭金を準備している様子が伺えます。これは、購入金額の20%から40%ほどになります。
一般的に住宅ローンを利用するときは、頭金がある方が総返済額を抑えることができるので、その分の利息の負担が減ります。住宅ローンの返済は長期にわたりますので、金利の影響が大きく、最終的な返済額に数百万円の差がでることもあります。
実際に、3,500万円の戸建住宅を購入する場合、頭金がある場合とない場合ではどのように違うのかを試算してみました。
頭金なし | 頭金100万円 | 頭金500万円 | |
毎月返済額 | 13万2,539円 | 12万8,753円 | 11万3,605円 |
総返済額(借入金額+利息) | 4,771万4,219円 | 4,635万819円 | 4,089万7,836円 |
総費用(総返済額+諸費用) | 4,871万5,219円 | 4,733万219円 | 4,175万836円 |
※借入期間30年、ボーナス払いなし、返済方法は元利均等方法、金利2.18%の場合
参照:じぶん銀行 新規お借入れ-住宅ローンシミュレーター
頭金がある場合とない場合では、毎月の支払金額や総費用にも大きな差が生まれます。もちろん、ボーナス払いや早期完済をすることによって更に金額が変わります。
■住宅ローンの頭金あり・なしのメリットとデメリットとは?
このように、頭金がある場合とない場合で総返済額などに差が生まれる住宅ローンですが、それぞれどのようなメリットとデメリットがあるのしょうか。
【頭金あり】
メリット
- 毎月の返済額が頭金なしの場合よりも低い
- 審査に通りやすい
- 頭金を入れることによって住宅ローンの金利を優遇される場合もある
デメリット
- 保有資産の全額を頭金にしてしまうと手数料などの諸経費を払えなくなるリスクがある
- 貯蓄が減り、更に住宅の購入後に収入額が減ってしまえば、ダイレクトに家計に悪影響がでる
【頭金なし】
メリット
- 入居してから10年間は住宅ローン控除制度を受けられるメリットが大きい
- 欲しい物件を即時に購入できる。頭金が貯まるまで待っていたら、せっかくの好条件の物件を他の人に購入される可能性もある
- 貯蓄が減らない利点もある
デメリット
- 総返済額が増える
- 住宅ローンの返済が続けられなくなり、住宅を売却して得た金額が住宅ローンの残債を下回る可能性がある
このように頭金あり・なしではそれぞれメリットとデメリットがあります。どちらを選択したとしても、デメリットを補完できるように、家族で返済計画をあらかじめ考えておくことが肝心です。
■長期のマネープランを立て、無理なく返済できる方法を選択することが大事
ここまで住宅ローンの頭金のあり・なしを考えてみましたが、「住宅ローンの頭金はなくてもいいのか?」あるいは「あった方がいいのか?」どちらなのでしょうか?実は「どちらとも言えない」が正解です。
住宅ローンを借りる際には、年収、家族構成、将来的な売却、借り換えなどの可能性を含め長期の返済プランを立てることが必要です。そして、それらは各家族によってまちまちです。つまり、各家族によって正解は違って当然なのです。住宅ローンの頭金があった方が良い家庭と頭金がなくても良い家庭に分けて考えてみましょう。
◎頭金があった方が良い家庭
・月収の大半をその月のうちに出費してしまう家庭
現在、子どもの教育費がかかっている、更に住宅ローン以外の返済などがある場合がこれにあたります。頭金が増えれば毎月の返済額を減らすことができますので、できるだけ多い頭金を貯めた方が良いでしょう。
・数年後にまとまったお金が必要になることが、あらかじめ分かっている
子どもの入学、自動車の購入、出産、転職予定、親の介護などが数年後に控えている場合は、住宅ローンの負担を減らして、少しでも多く貯蓄をする必要があります。このような家庭では、頭金を貯めてからマイホームを購入する方が、無理なく住宅ローンの返済ができるでしょう。
◎頭金がなくても良い家庭
・毎月の収入額が安定している
毎月安定した収入を得られる家庭の場合は、長期の返済プランが立てやすいため、無理なく支払える返済額が設定しやすくなります。頭金が貯まるまで待たずとも、安定して返済ができるでしょう。しかし、怪我や病気、事故は誰にでも起こりうることです。突然、収入がなくなった場合でも返済する能力がない場合は、やはり頭金を用意した方がリスクは軽減します。
■頭金あり・なしのどちらの方が、金融機関の審査が通りやすいのか
一説には金融機関に住宅ローンの相談をするとき、頭金がある方が審査に通りやすいと言われています。例えば、5,000万円の家を購入するときに頭金を500万円準備していたとしましょう。そのとき、金融機関から500万円貯めることができる人だという印象を残すことができます。
つまり、月給のうちいくらかを貯めることができていた=その分を毎月返済することができるマネー習慣がある人だと考えてもらうことができるのです。また、住宅ローンを借りるときは、一般的には家を担保に入れて借入れを行います。築年数を重ねれば資産価値が落ちるので、万が一のことを考えると頭金を少しでも多く入れてくれる方が金融機関としても審査が通しやすいようです。
頭金がなくても借りられる住宅ローンが増えてきましたが、上記のような理由から頭金がある方が住宅ローンの選択肢が多く、頭金がない方が選択肢は狭くなると考えても良いかもしれません。
■住宅ローンはマネープランを重視しましょう
いずれにしても、住宅ローンは長期のマネープランを立てて「返し方」を決めることが先決です。返済を無理なく行える金額を設定し、安定して返済を続けられる環境を整えることを最優先して、頭金のあり・なしを選択しましょう。
TEXT:マネチエ編集部
PHOTO:PIXTA
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