貯める 2017.09.12 危険がいっぱい、それでも…… タンス預金する人が増えている?
「タンス預金」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。タンス預金とは、金融機関ではなく手元にお金を保管しておくことを言います。この「タンス預金」をする人が増えていると言われています。一体なぜなのでしょうか。
タンス預金の実態
第一生命経済研究所のレポートによると、日本は2016年末に現金残高(手元に残している現金の残高)が102.4兆円になりました。これは国民1人につき、約81万円をタンス預金している計算になります。もちろん、国民全員がタンス預金をしているわけではないので、実際のタンス預金者1人あたりのタンス預金額が思った以上に多額であると推測されます。
金額もさることながら、家庭用金庫の販売数も増加しています。経済産業省生産動態統計年報(平成28年)によれば、2016年は家庭用の耐火性金庫が13万9,359個販売されたとのことです。2015年の11万3,940個から比べると約2割も増えています。
販売年 | 販売個数 |
2015年 | 11万3,940個 |
2016年 | 13万9,359個 |
それではなぜタンス預金が増えているのでしょうか。
タンス預金をしている人の気持ちを考えてみると「金融機関に預け入れをしてもあまり金利がつかないのなら、お金が必要になった時にすぐ利用できる」「マイナス金利となり、自分のお金がどうなるのか不安だから手元に置いておきたい」「マイナンバーが導入され、金融機関に預け入れをしている資産を把握されるのが嫌」などの理由が推測されます。
そのメリットは本当?
タンス預金はメリットがあると言われていますが、巷で言われるメリットにはどのようなことがあるのでしょうか。
・「相続税対策で有効だ」という噂は本当?
タンス預金は自宅で現金を保管していれば税務署には分からないため、相続税対策として有効だという噂から、タンス預金をする人もいるようです。しかしながら、タンス預金を相続時に課税対象とせずに相続するのは違法なことですし、相続税逃れだと指摘が入る可能性があります。
・「ペイオフ対策」になるというのは本当?
銀行に預け入れをすると、万が一銀行が破綻した際に1,000万円の元金と利息しか保護されないので、ペイオフ対策をしようとタンス預金をする人もいます。
確かにそれは一理あるとも言えますが、タンス預金にしておかなくても複数の金融機関に口座を振り分けることでペイオフ対策は可能になります。また、マイナス金利が導入された後、日本でも外国のように銀行口座管理料がかかるのではないかといわれるようになり、タンス預金にお金を移した人がいるのも事実です。
・「ATM手数料がかからないからお得」って本当?
手元にお金を置いておけば、ATM利用手数料を気にする必要もありません。金融機関の普通預金の金利が年0.001%という状況下では、100万円預けても年間で得られる利息はたったの10円です。ATMの利用手数料がかかると、その分資産が減ることになります。
・「安心感がある」って本当?
金融機関の破綻時や、災害などの非常事態が起きた時には、生活に必要な分のお金が手元にあると安心でしょう。
ただし、平日昼間であればATMの引き出し手数料が無料になる金融機関や、所定の場所での引き出しであれば手数料がかからないネット銀行等もあります。自分の活動範囲の中でATM手数料を無料にする方法があれば、タンス預金に大金を置いておく必要がないかもしれません。
タンス預金のデメリットって何?
それではタンス預金のデメリットはあるのでしょうか。大きく分けて2つあげられます。
・物理的なリスク
1つ目は、盗難、紛失、処分があげられます。タンス預金は自分でお金を管理する必要があり、大災害時の紛失、盗難の可能性があります。また、家族にタンス預金の置き場所を伝えていなければ誤って処分されるかもしれません。
・資産価値のリスク
もう1つは、金利はつかず、物価上昇時には資産価値が目減りすることです。日本銀行は物価上昇率を2%にすることを目標に掲げており、物価上昇局面ではタンス預金にしておけば表面的には変化がない様に見えたとしても、実際には資産が目減りしていることになります。
1万円で買えるみかんの個数を例に、物価が2%ずつ上昇すると購入可能数がどのように変わるのかを考えてみましょう。
みかん1個 | 100円 | 102円 | 104円 | 106円 | 108円 |
---|---|---|---|---|---|
個数 | 100個 | 98個 | 96個 | 94個 | 92個 |
(物価上昇率を2%とする)
このように、今まで1万円で100個購入できていても、1個100円が102円、104円になるなどの物価上昇することで、購入可能数が減っていきます。つまり、同じ1万円でもお金の価値が下がることになるのです。
タンス預金は金利がつかないため、お金が増えません。そのため、物価が上がればその分お金の価値が下がります。銀行に預け入れをすれば、わずかであっても利息がつくので、物価上昇局面では預け入れをしておく方がよいでしょう。
あらゆる場合に備えて、金融機関タンス預金は効率的に使おう
大災害で避難が必要になる時など、緊急の場合に備えてある程度は現金を持っていた方が良い場合もあります。ただし、必要以上に現金を手元においておくとリスクが伴います。金融機関をうまく活用し、あらゆる場合に備えるのが良いでしょう。
TEXT:マネチエ編集部
PHOTO:PIXTA
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