学ぶ 2017.03.21 2017年4月からのガス自由化で光熱費は安くなる!?

2016年4月の電力の小売り自由化に続き、2017年4月からはガスの小売り自由化がスタートします。電力自由化ではさまざまな業界から「新電力」が参入し、料金・サービス面の競争が活発化しました。消費者にとっては大きなメリットがあったといえるでしょう。しかし電力代が安くなるかどうかは個々の家の条件などに左右され、いまひとつわかりにくかったのも事実。今回はガス自由化がもたらす影響を見ていきましょう。

ガス自由化の目的はどこにある?

2017年4月から導入されるガス自由化の対象になるのは、都市ガス、簡易ガスを利用している家庭です。都市ガスとはガス管を通じて供給されるガスで、同じくガス管を経由して団地、マンションなどに供給されるのが簡易ガス。これまで東京ガス、大阪ガス、東邦ガス、西部ガスの大手4社をはじめ、都市ガス事業者がガス管の設置や管理、ガスの販売などを地域ごとに独占してきました。ちなみに、ガスボンベで供給されるLPガス(プロパンガス)は既に自由化されています。

事業者にとっての「ガス自由化」とは、事業者が自由にガスの値段を決められること。電力自由化と同じように、政府の許可を取ることで電力会社などさまざまな企業が都市ガスの販売を始められます。自由化で地域の独占がなくなり、新規参入が増えることでさらなる競争の活発化が期待されるのは電力自由化と同様です。経済の活性化という意味でも、異業種からの参入、都市ガス事業者の他エリアへの進出などに期待がかかります。

一方、消費者からみた「ガス自由化」とは、自由にガス会社を選択できること。ガス料金の低下につながる施策は、家計にとっては大きなメリットになるはずです。

もともと、この流れは1990年代から経済産業省が進めてきたもので、世界に比べて高かったガス価格を下げ、サービスを充実させていくのが目的です。こうして1995年に大規模工場向けにガス自由化が始まり、2004年には中規模工場、ホテルなどに範囲を拡大しました。そして2017年4月、家庭向けに広がることで全面的に自由化がされたのです。

どんな企業が参入するのか

4月の自由化に向けて、経済産業省にガス小売事業者として登録しているのは10社となっています。ただ、法人向けが多いのが現状で、一般家庭への販売を予定しているのは下記の4社です。

事業者エリアプラン名
東京電力エナジーパートナー関東未発表
中部電力中部カテエネガスプラン
関西電力関西なっトクプラン
九州電力九州未発表

電力自由化の際は、ガス会社や石油会社のエネルギー系のほか、商社や鉄道会社、携帯電話会社などが新たに参入し大きな話題を呼びました。しかし、現在のところは電力会社系列が目立ち、旅行代理店のエイチ・アイ・エス系列のHTBエナジーが参入を表明している程度です。

別分野からの新規参入が少ない理由、それは、ガス販売に参入するためには都市ガスの原料であるLNG(液化天然ガス)を確保しなくてはならないからです。

現在、日本の天然ガスは大半を輸入に頼っており、調達ルートを持っているのは、発電用にLNGを輸入している電力会社、そして石油会社、鉄鋼会社、輸入を担う商社のみ。そのため、新規参入のハードルは電力以上に高いようです。その点、日本でLNGを多く輸入、消費しているのは電力会社の方で、調達力はガス会社よりも上です。スケールメリットを生かし、安価なガス料金の提供に期待がかかるのは当然のことでしょう。新規参入事業者に電力会社の名前がずらりと並ぶのには、このような理由がありました。

そして、ガス機器の点検や故障、利用スタート時の処理・対応はガスの販売をする会社(小売事業者)ですが、ガス管の管理・運営は従来通り、都市ガス会社が行います。つまり、ガス漏れや事故などで対応するのは従来と同じガス会社(導管事業者)。提供されるガスの品質も、事業者によって差が出ることはありません。

これは、都市ガスは安全面から、各家庭から30分圏内に作業員を置かなければならない、という決まりがあるからです。電力自由化の際には「スマートメーター」が導入され、ネットワークによって電気使用量のチェック、電気の供給コントロールなどを行いましたが、ガス自由化ではスマートメーターは設置されず、ガスの検針は以前通り、目視で行われることになります。

一般消費者にはどんなメリットがあるのか

では、一般消費者にとってのメリットを見ていきましょう。ガスが自由化されると、私たちは価格やプランなどを比較しながら、一番お得なガス会社を選択できるようになります。企業が電気・ガスの料金をどちらとも自由に設定できるようになり、電力事業に進出したガス会社、ガス事業に進出する電力会社が独自の裁量で割引できるのです。

たとえば、関西電力が提供する関電ガスの家庭向けガス料金メニュー「なっトクプラン」は、ひと月あたり33立方メートル(大阪ガス標準家庭における使用量)だとすると年間6万144円です。これは、大阪ガスの年間6万3,348円に比べて約3,200円安くなります。さらに電気セット割引、早期契約割引、ポイントサービスなどを合算すると、年間5万7,816円(+ポイント300円)になり、約5,500円もお得になります。

電力・ガス自由化のチラシ

関西電力以外では中部電力が、電気代・ガス代をセットにした割引プランを発表。他の電力会社、そしてガス会社も同様のプランを投入してくるでしょう。たとえば、首都圏では東京ガスと東京電力の綱引きが始まろうとしています。

東京ガスは2016年4月の電力自由化に際して、都市ガスと電気料金のセットで電力小売に進出。ガス器具販売店の営業ネットワークも強みになり、約60万件の契約を獲得しました。電力会社大手から新電力に移った電力需要の約3割を占めるほどです。もちろん、シェアを奪われた東京電力もガス自由化で反撃に移ることは必至でしょう。ソフトバンクと組んで電気・通信のセット「ソフトバンクでんき Powered by TEPCO」を販売しています。ガス料金も加え、さらなる利便性でアピールすることは間違いありません。

家計で一定の割合を占める「ガス代」の削減を考える

光熱費で大きな割合を占めるガス代。家計で再検討すべきなのは都市ガス利用家庭だけではありません。LPガスをご利用の家庭も、事業者を再検討し、料金やプランの見直しを考えてみるのがおすすめです。前にも述べた通り、LPガスはすでに自由化されており、複数の事業者から自由に選ぶことが可能となっています。

また、都市ガス・LPガスとも、あらためて確認しておきたいのが支払い方法です。ガス料金がクレジットカードで支払える場合、現在お持ちのカードにポイントが貯められるかもしれません。一般的なカード還元率1%で年間6万円のガス代を払うなら、年間600円分のポイントが貯まります。

新規参入業者の数が少なめなこともあり、「ガス自由化」が注目を集め、盛り上がりを見せるのはまだまだこれからかもしれません。しかし、2016年の電力自由化の際も4月という年度替わりに照準を合わせ、新会社の参入やプランの発表が増えていきました。既存の登録事業者も、お得度、利便性を前面に出したプランを発表してくるはずです。料金比較サイトも大手の「エネチェンジ」などが早くもガス料金の比較コンテンツを打ち出しており、サービスが充実していきそうです。

さらに、関西電力が導入する「ポイントサービス」や「定額制」など、これまでになかったガス料金の体系、サービスが登場してくるかもしれません。消費者は各事業者のプラン、サービスが出揃うのを待ち、セット割引、サービス内容によってガス事業者を比較するのがおすすめです。その上で、既存の契約から乗り換えるかどうかを選択するのが良いでしょう。

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TEXT:マネチエ編集部
PHOTO:PIXTA

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